知的財産権に関するQ&A(3) 特許法(2)|特許調査、特許が認められるための要件


弁護士 山崎道雄
弁護士 前田将貴

弁護士知財ネットでは、知的財産に関するQ&Aを公開しています。今回も前回に引き続き、特許法に関するよくある質問と回答をお届けします。
今回は、前回の特許調査に関する質問の続きと、特許が認められるための要件に関する質問にお答えします。
(前回のQ&A特許法(1)はこちらをご参照下さい。)

 

知的財産権に関するQ&A(3) 特許法(2)|特許調査、特許が認められるための要件

Q11  特許登録原簿は、どこで入手することができますか。

A11 特許登録原簿謄本は、特許侵害訴訟を提起する場合に入手して添付書類として裁判所に提出したりする時などに必要となります。特許登録原簿の閲覧や謄本の入手は、特許庁や各地方の経済産業局特許室等で可能です。
また、一般社団法人発明推進協会(http://www.jiii.or.jp/tokyo/order.htm)や財団法人日本特許情報機構(http://www.japio.or.jp/service/service02_02.html)を通じて、登録原簿謄本を入手することも可能です。
なお、謄本には、認証を付してもらうことができます。

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Q12  包袋とは何ですか。

A12 特許庁が保管している特許出願以後の特許庁と出願人のやり取り一式のことです。
包袋には、出願書類はもちろん、審査過程における拒絶理由通知書、意見書、補正書に加えて、登録後に行われた審判手続きにおける当事者の主張書面等、すべての資料が綴じられています。特許情報プラットフォームにも特許出願から登録までの資料は見ることができますが、それ以降の資料を確認する場合には、包袋を閲覧する必要があります。
なぜこのような書類を確認するのかというと、出願人(あるいは特許権者)が行った主張の内容が、特許請求の範囲の記載の解釈に影響を与える場合があるからです。例えば、出願過程において特許発明の範囲を限定的に解釈する主張が認められて特許が付与された場合には、その後の侵害訴訟において特許発明の範囲を広く解釈すべきであるという審査過程と矛盾する主張は認められるべきではありません。そのため、特許請求の範囲を解釈するには包袋を十分に検討する必要があります。

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Q13 包袋は、どこで入手することができますか。

A13 特許登録原簿の閲覧や謄本の入手は、特許庁や各地方の経済産業局特許室等で可能です。
また、一般社団法人発明推進協会(http://www.jiii.or.jp/tokyo/order.htm)や財団法人日本特許情報機構(http://www.japio.or.jp/service/service02_01.html)を通じて、登録原簿謄本を入手することも可能です。
なお、特許情報プラットフォーム(前回Q3参照)の審査書類情報照会(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/tokujitsu/pfwj/PFWJ_GM401_Top.action)によって、包袋を参照できます(ただし、平成15年7月以降のもののみが参照可能です。)

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Q14  発明の特許要件である「産業上の利用可能性がある」とは、具体的にどのような意味でしょうか。

A14  特許法第29条1項本文にいう「産業」とは、工業に限らず、鉱業、農業、水産業、林業、牧畜業なども広く含む概念であり、およそこのような意味での産業で利用する可能性があればよいという意味です。
産業上の利用可能性を欠くものとしては、「人間の手術、治療又は診断する方法」(人間に外科的処置を施す方法等)、「業として利用できない発明」(喫煙方法のように個人としてのみ利用する発明等)、「実際上、明らかに実施できない発明」(日本列島に沿って太平洋に台風防止塀を設ける発明等)が典型例となります(なお、特許庁審査基準第Ⅱ部第1章2参照)。

Q15  新規性(特許法29条1項)とは、具体的にどのような意味ですか。

A15 発明が既存の技術ではなく新しい知見であることを新規性といいます。
特許法は、「公然知られた」発明(公知、第29条1項1号)、「公然実施をされた」発明(公用、第29条1項2号)、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(特許公報、論文、書籍、インターネット等で公開された発明。刊行物等公知、第29条1項3号)に該当しない場合には、新規性ありとしています。ただし、新規性があっても進歩性(同第29条2項)がないと特許の登録要件を満たしません。

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Q16  出願を予定している発明の実施品の販売を検討しています。何か注意点はありますか。

A16 まず、発明者のために守秘義務を負わない者に発明の内容を知られてしまうと新規性を欠くこと(公知)となり、原則として、特許登録が認められません。そのため、当該発明の情報管理は徹底いただく必要があり、例えば、重要な取引先であっても守秘義務契約を締結しないまま発明の内容を開示してしまうことには問題があります。
また、特許出願前に、実施品を展示会に出展したり、現に販売してしまった場合(公知若しくは公用)にも、新規性を欠くと判断される可能性がありますので、ご注意ください。

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Q17  特許出願前に発明が公になれば、絶対に特許登録できないのでしょうか。

A17 新規性を失った場合でも、①意に反して新規性を失った場合、②特許を受ける権利を有する者の行為に起因して公知となった場合、当該事由が発生してから6か月以内に出願をすれば、特許を受けることができます。
なお、②特許を受ける権利を有する者の行為に起因して公知となった場合には、特許出願と同時に、新規性喪失の例外適用を受けたい旨の書面を提出し、かつ、出願の日から30日以内に新規性喪失の例外の適用を受けることができる発明であることを証明する書面を提出しなければなりません(特許法30条第3項)。

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Q18  進歩性(特許法29条2項)とは、具体的にどのような意味ですか。

A18 出願時に、その発明の属する技術分野の通常の知識を有する技術者(当業者)が容易に考えつくことができない発明であることを進歩性といいます。出願発明Aは、出願時に公知となっていた発明A’と同一ではないが、当業者において発明A’から容易に想到できた場合には、進歩性を欠くこととなります。進歩性欠如は、審査の審判の過程でもっともよく出てくる要件です。

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Q19  進歩性は、どのようにして判断されますか。

A19 現在の実務をごくごく簡略化しますと、進歩性判断は、①本件特許発明の要旨認定、②引用発明(主引例)の認定、③本件特許発明と引用発明との対比(一致点及び相違点の認定)、④相違点の判断という手順で行われます。
このうち④相違点の判断について、より具体的には、本件特許発明と引用発明との相違点に係る構成が、別の引用例(副引例)に記載されているとき又は周知技術であるときは、そのような構成を主引例と組合せること又は置換することが容易か否かを判断します。その判断の際には、技術分野の関連性・課題の共通性・作用や機能の共通性・内容中の示唆等の観点から検討し、また、構成の組合せ又は置換を阻害する要因があるか否かを検討します。その結果、構成の組合せ又は置換が容易であると評価される場合には進歩性が否定されることとなります。他方、これらが容易でない場合(又はそれが容易であっても予想以上の効果がある場合)には、進歩性は肯定されることとなります。
本件特許発明と引用発明との相違点に係る構成が記載されている証拠(副引例)がない場合においては、進歩性が肯定されうるところですが、公知材料の中からの最適材料の選択・数値範囲の最適化好適化・均等物による置換・技術の具体的適用に伴う設計変更等、相違点に係る構成が設計事項であると認められるときには、進歩性が否定されることとなります。以前に比べると進歩性を認める傾向が強い、と言われたりしています。

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Q20  特許登録が認められない「公序良俗又は公衆衛生を害するおそれのある発明」(特許法32条)とは、具体的にどのような意味でしょうか。

A20  実務上問題となることが少ない要件であるため32条該当性を判断した裁判例も僅かですが、特許登録が認められなかった具体例としては、東京高裁昭和40年12月14日判決・判例191号223頁(男性精力増強器事件)があります。

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