知的財産権に関するQ&A(5) 特許法(4)|発明者


弁護士 山崎道雄
弁護士 前田将貴

弁護士知財ネットでは、知的財産に関するQ&Aを公開しています。今回も特許法に関するよくある質問と回答をお届けします。今回は、発明者に関する質問にお答えします。

知的財産権に関するQ&A(5) 特許法(4)|発明者

Q31 発明者とは何ですか。

A31 特許法第29条は「産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。」と規定していますので、特許を取るためには、まず「発明をする」ことが必要です。この発明をした者を「発明者」といいます。特許法には発明者の明確な定義はありませんが、発明は自然法則を利用した技術的思想の創作ですので、現実にそのような創作を行った者が発明者になります。そのため、そもそも創作活動を現実に行うことができない法人は発明をすることができませんので、自然人のみが発明者になり得ます。また、資金援助をしただけの者や、指示に従って補助をしたに過ぎない者は発明者には該当しません。他方、その創作に複数の者が加担した場合には、共同発明となり、発明者は複数となります。

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Q32  発明者は、発明に対してどのような権利を持つのでしょうか。

A32 発明者は、発明したことによって、①特許を受ける権利及び②発明者名誉権を取得します。
①特許を受ける権利とは、その発明について特許出願を行い、特許を取得し得るという法的な地位のことです。つまり、特許権が発生するためには設定の登録が必要ですが(特許法第66条1項)、設定の登録を受けるためには出願することが必要です。この出願を行うことができる法的地位のことを「特許を受ける権利」といいます。
②発明者名誉権とは、発明に対する人格的な権利のことをいいます。人格権の保護が手厚い著作権法とは異なり、特許法では出願書類や公報等に発明者として氏名が掲載されるという程度でしか保護されていません。

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Q33 特許を受ける権利について、もっと詳しく教えてください。

A33 Q32で説明したとおり、特許を受ける権利とは、その発明について特許出願を行い、特許を取得し得る法的な地位のことです。特許を受ける権利は、発明したことによって原則として発明者に生じ(例外:職務発明の場合)、特許権の設定登録によって特許権の発生と同時に消滅します。特許を受ける権利は財産権の1つなので、移転することが可能です(特許法第34条)。また、特許を受ける権利に基づいて、他人に仮専用実施権の設定や仮通常実施権の許諾をすることができます(特許法第34条の2、34条の3)。

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Q34 仮専用実施権、仮通常実施権とは何ですか。

A34 いずれも特許権成立前にライセンスを認める権利です。簡単にいうと、これらの権利の設定又は許諾を得ておけば、その許諾された範囲内で自由に発明を実施することができ、特許権者から補償金請求をされることがなくなります。
従来は、特許登録後の専用実施権の設定及び通常実施権の許諾のみが特許法に定められており、特許登録前の段階で第三者にライセンスを与えることについて規定はありませんでした。そこで、平成21年改正によって導入されたのが仮専用実施権と仮通常実施権です。これら権利の内容は、それぞれ専用実施権、通常実施権とほぼ同様です。また、特許権の設定の登録がなされた場合、仮専用実施権者は専用実施権の設定を、仮通常実施権者は通常実施権の許諾をうけたものとみなされます(特許法第34条の2第2項、第34条の3第2項)。

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Q35  職務発明の場合は、誰が特許を受ける権利を取得するのですか。

A35 詳細は職務発明について取り扱う際に説明しますが、職務発明の場合、一定の要件のもとで使用者等が特許を受ける権利を取得することができます。なお、使用者等が取得するのは特許を受ける権利のみですので、発明者名誉権については発明者が取得することになります。

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Q36  複数の者が共同で発明をした場合、特許を受ける権利はそれぞれの発明者が取得するのでしょうか。

A36 複数の者が共同で発明をした場合には、特許を受ける権利は発明者の共有となります。

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Q37  特許を受ける権利が共有となっている場合と単独の場合では、何か違いがありますか。

A37 特許を受ける権利が共有の場合には、特許権が共有になる場合と同様の制限が定められています。これは、他の共有者が誰であるのかという点に各共有者が重要な利害を有しているからです。
具体的には、持分譲渡、仮専用実施権の設定、仮通常実施権の許諾には他の共有者の同意が必要となります(特許法第33条3項、4項)。
また、特許出願についても、各共有者は単独で行うことができず、共同で行わなければなりません(特許法第38条)。1人でも欠けている場合には、拒絶理由及び無効理由とされています(特許法第49条2号、123条1項2号)。拒絶査定不服審判についても、共同で請求しなければなりません(特許法第132条3項)。

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Q38 特許を受ける権利を有していない者が特許出願すると、どうなりますか。

A38 特許を受ける権利を有していない者による特許出願を冒認出願といいます。
審査過程で冒認出願であることが判明すると、その出願は拒絶されてしまいます(特許法第49条7号)。また、冒認出願は無効理由とされていますので、誤って登録されてしまった場合には無効審判によって無効となります(特許法第123条1項6号)。

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Q39 真の権利者が、冒認出願によって登録された特許を無効にするのではなく、取り返すことはできないのですか。

A39 平成23年改正によって、冒認出願に対して特許が登録された場合に、真の権利者に特許権を移転することが認められています(特許法第74条)。そのため、真の権利者であれば、冒認出願に対して付与された特許を取り返すことができます。

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Q40 特許登録前に真の権利者が冒認出願に気付いた場合、なにかできないのでしょうか。

A40  特許法には明文の規定はありませんが、特許庁では、特許登録前の審査段階において、真の権利者が冒認出願をした者を相手方とする特許を受ける権利の確認判決及びその確定証明書を提出することで、出願人名義を真の権利者に変更することを認めています(方式審査便覧45.25)。

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