知的財産権に関するQ&A(10) 特許法(9)|ライセンス契約

弁護士 山崎道雄
弁護士 前田将貴

弁護士知財ネットでは、知的財産に関するQ&Aを公開しています。
今回も特許法に関するよくある質問と回答をお届けします。
今回は、ライセンス契約に関する質問にお答えします。

知的財産権に関するQ&A(10) 特許法(9)|ライセンス契約

Q81 特許のライセンス契約とは何ですか?

A81 特許のライセンス契約(実施許諾契約)とは、特許権者が第三者に対して特許発明の実施を許諾する契約です。特許権者のことを「ライセンサー」、その相手方である実施権者のことを「ライセンシー」といいます。
特許権は特許発明を独占的に実施できる権利ですので、特許権者以外の者が特許発明を実施した場合には、損害賠償請求や差止請求の対象となってしまいます。ライセンス契約を締結することでそれらを回避して特許発明を実施することができ、他方、特許権者はライセンスの対価として実施料等を得ることができます。

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Q82 ライセンス契約ではどのような内容を定める必要がありますか。

A82 ライセンス契約では、通常次のような内容が定められています。
・対象となる特許の特定
・実施権の種類(通常実施権?専用実施権?独占的通常実施権?)
・実施権の範囲(契約期間、実施できる地域、実施行為の態様等)
・実施行為
・実施料とその支払時期
・第三者が侵害した場合の対応
これ以外にも、契約期間や解除等、通常の契約に定められる条項も定める必要があります。

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Q83 特許の実施権にはどのような種類がありますか。

A83 特許法では、通常実施権と専用実施権という2つの実施権が規定されています。通常実施権とは、特許発明を実施できるという権利です。これに対して専用実施権は、ライセンシーだけが特許発明を実施できるという権利です。通常実施権は当事者の合意のみで設定することができますが、専用実施権の場合は原簿への登録を行わなければ設定することができません(特許法第98条1項2号)。専用実施権を設定した場合、設定行為で定めた範囲内においては特許権者でさえも特許発明を実施できなくなります(特許法第77条2項)。
また、通常実施権の中でも、特許権者が他の第三者に実施許諾を行わない旨の特約が付されているものを独占的通常実施権といいます。

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Q84 実施権の範囲とは何でしょうか。

A84 ライセンス契約によって特許権者が許諾した条件の実施権が成立します。この実施の範囲についての制限を実施権の範囲といいます。例えば、期間や個数、回数、地域等様々な条件とすることができます。この実施権の範囲外の実施行為は特許権の侵害行為となります。

Q85 実施行為とは具体的にどういう点に注意すればよいでしょうか。

A85 物の発明の場合には、その物の生産、使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為が実施にあたります(特許法第2条3項1号)。そのため、特許権者からライセンスを受けて実施品の生産及び譲渡を行うには生産行為と譲渡行為をライセンスの対象とします。このように想定される実施行為をすべて含むように適切に定める必要があります。

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Q86 実施料について詳しく教えてください。

A86 一般的に実施料は、①定額(オールオーバー方式)、②実施品の販売総額×実施料率、③実施品の販売個数×1個あたりの実施料(②③はランニング方式)、等によって算定することとされています。もちろん、これらを組み合わせることも可能です。
②や③の場合、実施料を算定するために販売数量を開示する必要がありますので、その旨の規定が必要です。
また、②や③によって算出すると、ライセンシーが販売しなかった場合や販売数量が少なかった場合、特許権者は十分な実施料を得ることができません。それを防ぐために、実施料について最低額を定めることもあります。

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Q87 特許発明を実施している第三者に対して、ライセンシーが損害賠償や差止を求めることはできますか?

A87 専用実施権は設定行為で定めた範囲内において特許権と同等の権利とされていますので、専用実施権者であれば、第三者に対して専用実施権侵害に基づく損害賠償請求と差止請求が認められています(特許法第100条、第102条。なお、最高裁平成17年6月17日判決は、専用実施権を設定した特許権者にも差止請求を認めています)。他方、通常実施権は自らが実施できるという権利に過ぎず、第三者の実施を阻止する権利ではありません。そのため、第三者に対する通常実施権侵害に基づく損害賠償請求や差止請求は認められていません。しかし、通常実施権のうち独占的通常実施権については、一般的に損害賠償請求が認められており、差止請求についても、債権者代位構成をとるなど、結論として認めた裁判例があります(特に、独占的通常実施権者による差止請求の可否については争いがあります。)。

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Q

88 まだ特許登録されていない発明についてライセンスを受けるためにはどうすればよいですか?

A88 仮通常実施権又は仮専用実施権によって特許登録されていない発明についてライセンスを受けることができます。
これらの権利の許諾を得ることで、後の補償金請求を受けることなく実施することができます。また、特許権の設定の登録がなされた場合、仮専用実施権者は専用実施権の設定を、仮通常実施権者は通常実施権の許諾をうけたものとみなされます(特許法第34条の2第2項、第34条の3第2項)ので、特許権の設定登録後も実施することができます。
これらについてはQ34もご参照ください。

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Q89 ライセンスを受けていたのですが、特許が無効になりました。この契約はどうなるのでしょうか。支払済みの実施料はどうなるのでしょうか。

A89  ライセンス契約の期間中に対象となる特許が無効となった場合や特許料未納により消滅した場合、ライセンス契約は終了します。それ以降の実施料を支払う必要はありません。しかし、既に支払った実施料について返還を求めることができるか否かについては様々な見解が存在しています。そのため、一般的なライセンス契約には後に特許が無効になった場合であっても既に支払済みの実施料等を返還しない旨の規定が定められています。この規定によって、支払済みの実施料の返還を求めることはできないということになります。

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Q90 通常実施権のライセンス契約を締結していたのですが、特許権者が特許権を第三者に譲渡しました。ライセンス契約はどうなりますか。

A90  平成23年法改正によって従来の通常実施権設定の登録制度は廃止され、通常実施権は、その発生後に特許権等を取得した者に対しても効力を有するとされています(特許法第99条)。そのため、通常実施権設定後に特許権が譲渡されても、それ以降も通常実施権者として特許発明を実施することができます。なお、商標の通常使用権については、登録をしておかなければ第三者に対抗できませんので注意が必要です(商標法第31条第4項)。

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