知的財産権に関するQ&A 商標法(4) 出願審査手続、拒絶査定、登録後の使用


弁護士 飯田 明弘
弁護士 春山 俊英
弁護士 藤野 睦子

弁護士知財ネットでは、知的財産に関するQ&Aを公開しています。今回も前回に引き続き、商標法に関するよくある質問と回答をお届けします。
今回は、出願審査や登録といった手続面のご質問、登録後の使用に関するご質問についてお答えいたします。

 

知的財産権に関するQ&A 商標法(4) 出願審査手続、拒絶査定、登録後の使用

Q31 商標登録出願後の手続きの流れを教えてください。

A31 商標出願手続は、主に、①出願、②公開、③審査、④登録に区分することができます。

① 出願
商標登録を受けようとする場合、一定の事項を記載した願書を特許庁長官に提出します(商標法第5条1項)。願書には、出願人の氏名等の基本情報に加えて、登録を受けようとする商標、指定商品又は指定役務、そして商品及び役務の区分を記載します(商標法第5条1項各号)。登録を受けようとする商標がホログラム商標や立体商標、色彩のみからなる商標、音商標等の場合にはその旨記載する必要があります(商標法第5条2項など)。その他、商標の種類ごとに記載方法が異なるなど工夫が必要になりますので留意が必要です。

② 公開
特許庁長官は、商標登録出願後、その商標出願について出願公開をしなければなりません(商標法第12条の2第1項)。出願公開は商標公報を通じて行われます。特許出願の場合とは異なり(特許法Q23)、商標登録出願後、商標公報が準備でき次第速やかに行われますが、実際には数週間程度かかります。

③ 審査
商標出願があったときは、まずこの出願が最低限の形式的要件を備えているか否かが審査されます(方式審査)。最低限の形式が整っていない場合、補正命令が発せられますが、それでも適切な補正が行われない場合には手続が却下されることになります(商標法第77条2項が準用する特許法第17条3項及び4項、同18条)。形式に問題がなければ、次に審査官が拒絶理由の有無を審査します(実体審査、商標法第14条)。商標登録出願について拒絶理由が見つからない場合には、商標登録をすべき旨の査定(登録査定)がなされます(商標法第16条)。他方、拒絶理由が発見された場合、審査官は出願人に拒絶理由を通知します(商標法第15条の2)。出願人は、拒絶理由通知記載の理由を踏まえて意見書の提出又は補正を行いますが、それでも拒絶理由が解消されていないと審査官が判断した場合、審査官は、拒絶査定を行います(商標法第15条)。
なお、出願から登録査定がなされるまでは1年前後の期間がかかりますが、出願商標をすでに使用している場合や、特定の商品・役務のみを指定して出願する場合には、追加費用なしで「商標早期審査・早期審理制度」や「ファスト・トラック審査」の対象になり、査定までの期間を短縮することができる場合がありますので、出願の際にはご利用をご検討ください。

④ 登録
登録査定がなされても、まだ商標権は成立していません。商標権を取得するためには、商標権の設定の登録が必要です(商標法第18条1項)。商標権の設定の登録を受けるためには、査定又は審決の謄本の送達があった日から30日以内に所定の登録料を納付する必要があります(商標法第41条及び同条の2)。

商標出願に関連する手続を簡単に図で整理しましたので、ご参照ください。

商標法(4)出願審査手続、拒絶査定、登録後の使用 Q31

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Q32  特許庁から「拒絶理由通知書」が届きました。「この商標登録出願については、商標登録をすることができない理由がある」等と記載されているのですが、どうしたらよいでしょうか。

A32 商標登録出願の実体審査にあたって、審査官が拒絶理由(商標法15条各号)を発見した場合、審査官は出願人に理由を付して拒絶理由通知書を送付します(商標法第15条の2)。拒絶理由の具体例については、Q21~Q30をご参照ください。実務上、拒絶理由通知を受け取ることは珍しいことではないため、通知の内容を踏まえて、通知に記載された応答期間内に、①意見を述べたり(意見書の提出)、②指定商品・指定役務を修正したり(手続補正書の提出)するなどにより、拒絶理由を解消できないかご検討ください(Q33参照)。拒絶理由を解消できなければ、拒絶査定となります(同15条)。
拒絶理由通知書を受け取ったら、必要に応じて弁護士や弁理士に相談されるとよいでしょう。

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Q33 私が出願した商標について、「他人の登録商標に類似する商標であって、同一の指定商品に使用するものであるから、商標登録できない。」という拒絶理由通知が来ました。理由の欄には、商標法第4条第1項第11号と記載されています。ですが、私が出願した商標(マーク・ネーミング)は、私が考えたものです。なんとか登録にできないでしょうか。

A33 まず、意見書において出願商標が他人の登録商標と類似していないと主張することや、指定商品を変更する形での補正が考えられます(Q32参照)。さらには、拒絶理由通知で示された登録商標を有する第三者から商標権自体を譲り受けるということも考えられます。
なお、商標は、特許や意匠などの知的財産権と異なり、新規性が登録要件になっていない(Q20参照)ため、既に他人が使用している商品名等であることをもって直ちに商標登録が否定されるものではありません。したがって、このケースのように、出願人が自分で考え出したものであっても、その類似範囲において第三者が商標登録又は商標登録出願を行った場合、いわゆる冒認のような事例でない限り、その第三者が原則として優先的に保護されることになります(先願主義、商標法第8条1項、同第4条1項11号)。

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Q34  拒絶査定を受けました。何とか登録したいのですが、何か手立てはありますか。

A34  拒絶査定に不服がある場合、原則として査定の謄本の送達があった日から3ヶ月以内に拒絶査定不服審判を請求することができます(商標法第44条)。これは特許庁が行う手続ですが、拒絶査定を行った単独の審査官ではなく、3名又は5名の審判官からなる合議体で審理されますので、より公平な観点から慎重に審査されます。拒絶査定不服審判においては、当該商標登録出願に拒絶理由があるか否かが審理対象となります。そのため、拒絶査定不服審判では、拒絶査定で通知された拒絶理由以外の拒絶理由についても審理することができますし、審判官の判断で当事者が申し立てていない理由も審理することができます(商標56条1項、特許法153条1項)。審理の結果、審判官は、拒絶理由がない場合には登録審決をし、拒絶理由がある場合は拒絶審決をします。また、審判体が原査定(拒絶査定)を取り消して審査官に再度審査させるべきだと判断した場合には、審査に差し戻すこともできます(商標法56条1項、特許法160条1項)。
なお、2019年度では、拒絶査定不服審判の結果、約65%が登録となっています。

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Q35  拒絶査定不服審判を請求しましたが、拒絶査定が維持されました。もうお手上げですか。

A35 拒絶査定不服審判の拒絶審決に不服がある場合、30日以内に審決取消訴訟を提起することができます(商標法第63条)。この審決取消訴訟というのは、行政機関である特許庁ではなく、司法裁判所における訴訟手続となります。審決取消訴訟は東京高裁の専属管轄とされ、知的財産高等裁判所で行われます。そのため、通常の民事事件と異なり、地方裁判所における審理が省略されることになります。
審決取消訴訟で審決が取り消されると、再び特許庁の審判手続に戻りますが、裁判所の判断は特許庁を拘束します(行政事件訴訟法第33条1項)。そのため、特許庁は、判決に反する審決を行うことはできません。なお、審決取消訴訟で審決が維持された場合、さらに最高裁判所に上告/上告受理申立を行うこともできます。

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Q36  登録査定を受けました。商標権設定・維持するために必要な手続を教えてください。

A36 1 設定登録のための手続
商標権の設定登録を受けるためには、登録査定の謄本を受けた日から原則として30日以内に登録料を納付しなければなりません(商標法18条2項、41条1項、41条の2第1項)。登録料は10年分の一括納付、5年分毎の分割納付ができ、分割納付の場合、原則として商標権の存続期間満了前5年までに後期分登録料を支払わなければなりません(商標法41条の2~4)。登録料納付に必要となる納付書の作成方法等については、以下のウェブページをご参照ください。
https://www.jpo.go.jp/system/basic/otasuke-n/shohyo/satei/

2 維持のための手続
商標権の効力の存続期間は10年ですが、更新することで権利を維持することができます(19条2項)。更新手続は、原則として商標権の存続期間の満了前6か月から満了の日までの間に、所定の事項を記載した更新登録申請書を特許庁に提出して行います(20条1項2項)。更新申請書の作成方法等については、以下のウェブページをご参照ください。なお、更新の際にも更新料を支払う必要があります(分割納付可、商標法23条1項、40条第2項、41条の2第7項)。
https://www.jpo.go.jp/system/process/toroku/touroku_yousiki.html

3 注意点
原則として、分割納付の場合の後期分納付期限日や更新期限に関する特許庁からの通知はありませんのでご注意ください。納付期限の管理が不安な方は、令和2年4月1日より、特許庁が登録制でE-メールによる料金支払期限通知サービスを開始しましたのでご利用をご検討ください。同サービスについては以下のウェブページをご参照ください。
https://www.jpo.go.jp/system/process/toroku/kigen_tsuchi_service.html
なお、権利者の住所や名称が変更したのに特許庁に変更登録申請をしていないと、第三者から不使用取消審判・無効審判請求等があった場合にその旨の通知が届かず、権利が失効してしまう場合があります。住所等の変更登録申請については、以下のウェブページをご参照ください。
https://www.jpo.go.jp/system/process/toroku/touroku_yousiki.html

各手続に疑問がある方は、弁護士知財ネットのウェブページにおいてご相談の申込みが可能ですので、是非下記ページへアクセスください。
【弁護士知財ネット ご相談の申込: https://iplaw-net.com/soudan 】

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Q37  無事に商標権の設定登録ができたのですが、この商標を使おうと思っていた商品の発売が延期になり、しばらく、この商標を使用する予定がありません。何か問題があるでしょうか。

A37 設定登録日から3年以上その商標を使用しなかった場合、権利を維持するにあたって問題があります。
継続して3年以上各指定商品・指定役務について登録商標の使用をしていないときは、誰でも、その指定商品・役務にかかる商標登録を取り消すことについての審判(以下「不使用取消審判」といいます。)を請求できます(商標法50条1項)。したがって、商品発売が延期になり設定登録日から3年以上その商標を使用していなかった場合、第三者から不使用取消審判請求をされた場合対抗できず、商標登録が取り消される可能性があります。
Q&A18もご参照ください。

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Q38  「iplaw-net」(小文字)で商標登録したのですが、大文字の「IPLAW-NET」の方が目立つし、自社のサイトのデザインにも合うようです。大文字に変えて使用してもよいでしょうか。また、ある商標を特定の色を指定して商標登録した場合に、色だけを変更することはどうでしょうか。

A38 1 前段について

「IPLAW-NET」に変更して使用しても問題ありません。
登録商標とは少し違った形で使用する場合、不使用取消審判(商標法50条1項)において登録商標と同一の「商標の使用」をしているかどうかが問題となります。この場合の「商標」については社会通念上同一と認められるものであればよいと理解されています。そして、「書体にのみに変更を加えた同一の文字からなる商標」については社会通念上同一であって登録商標の使用と認めると定められており(商標法38条5項カッコ書)、特許庁では、その例の一つとして「ローマ字の大文字と小文字の相互間の使用」として、「全て小文字の商標」から「全て大文字」に変えたものが挙げられています。Q&A37もご参照ください。

 2 後段について

ある商標を特定の色で商標登録した場合に、他の色に変更して使用することは、商標を維持するにあたって問題がある可能性があります。
特定の色を指定した登録商標を違う色で使用したときは上記と同様不使用取消審判において登録商標と同一の「商標の使用」(商標法50条1項)をしているかが問題となります。
色が違うことによって登録商標と、社会通念上同一の商標でないまたは類似しない商標(商標法70条1項)になる場合には、登録商標の使用をしていないと判断される可能性があります。
なお、上記と反対に特に色にこだわらず(通常の黒色で)登録した場合=色彩を指定して登録していない場合は、どの色彩で使用しても「商標の使用」となります。

登録商標とは少し違った形や色で使用する場合に問題がないか疑問がある方は、弁護士知財ネットのウェブページにおいてご相談の申込みが可能ですので、是非下記ページへアクセスください。
【弁護士知財ネット ご相談の申込: https://iplaw-net.com/soudan 】

Q39  登録商標を表示する際には、🄬やTMと記載しなければならないのでしょうか。商標権が設定登録される前に、商標を表示する場合はどうですか。

A39 1 前段について

登録商標を表示する際に、🄬やTMと記載する必要はありません。
一般に、🄬は「REGISTERED TRADEMARK」=登録商標、TMは「TRADEMARK」=商標を意味すると理解されています
商標法は、商標権者は、指定商品等に登録商標を付するとき等所定の場合に、その商標にその商標が登録商標である旨の表示(以下「商標登録表示」といいます。)を付するように努めなければならないと定めています(73条)。あくまで努力義務ですが、この義務の対象となる商標登録表示は「登録商標」とその「登録番号」=『登録商標第○○○○号』という表示になります(商標法施行規則17条)。
なお、🄬を記載していると、その登録商標を商標として使用している(商標法50条1項)と認められやすくなります。

 2 後段について

商標権設定前にTMを記載しても問題ありませんが、🄬は記載してはいけません。
商標法は、所定の場合に、登録を受けていないのに商標に「商標登録表示」(=「登録商標第○○〇〇号」)又は「これと紛らわしい表示」を付する行為を禁じており、これに反する行為は刑事罰(3年以下の懲役又は300万円以下の罰金)の対象となります(74条、80条)。
商標権が設定される前に🄬を記載した場合、🄬は「登録商標」の意味であり商標登録表示と紛らわしい表示であるとして刑事罰の対象になる可能性があります。他方、TMは単なる「商標」の意味ですので、商標登録表示と紛らわしい表示には当たらないとされています。
なお、商標登録制度は各国それぞれ別ですので、海外で商品を販売・製造等する際に日本で登録していても当該国で商標登録していない場合に🄬を記載すると問題になることがあります。

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Q40  私は、3か月前に、イタリアンレストランを廃業して、テイクアウトのみ(イートインスペースなし)のカツレツを販売するお店にリニューアルしました。レストラン名を指定役務「飲食物の提供」(43類)で商標登録しています。同じネーミングを今の店名や容器に用いているのですが、登録商標を使用しているといえますか。

A40 指定役務「飲食物の提供」との関係では、登録商標を使用していないことになります。
指定役務「飲食物の提供」(43類)は、基本的にはレストラン内でお客さんに飲食物を提供するサービスのことをいい、テイクアウトのみ(イートインスペースなし、以下同じ。)でカツレツを販売する場合は、後記のとおり、異なる指定商品・役務となります。したがって、テイクアウトのみでカツレツを販売するお店の場合に商標を店名や容器に用いていても、その商標を指定役務の関係で使用していないことになり、不使用取消審判(商標法50条1項)を請求されたときに対抗できず商標を取り消されてしまう可能性があります。
テイクアウトのみのお店でカツレツを販売する場合の指定商品・役務は、例えば、カツレツ(主成分肉)については指定商品「カツレツ」(29類)や「肉製品」(29類)、商品展示や接客サービス部分については指定役務「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(35類)が考えられます。

以上のように、業態変更等をした場合、変更後の事業が、保有している登録商標の指定商品・役務の範囲内か否かについて注意する必要があります。ご自分で判断が難しい場合には、弁護士知財ネットのウェブページにおいてご相談の申込みが可能ですので、是非下記ページへアクセスください。
【弁護士知財ネット ご相談の申込: https://iplaw-net.com/soudan 】

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