知的財産権に関するQ&A 商標法(2) 商標の登録


弁護士 甲斐 一真
弁護士 坂根 大亮
弁護士 畑 雄太

弁護士知財ネットでは、知的財産に関するQ&Aを公開しています。今回も前回に引き続き、商標法に関するよくある質問と回答をお届けします。
今回は、商標を登録するための手続、要件に関する質問にお答えします。

 

知的財産権に関するQ&A 商標法(2) 商標の登録

Q11 商標を登録するためには、どの機関に対して、どのような手続を行えばよいですか。

A11 商標を登録するためには、商標権を取得したい商標を特許庁に出願する必要があります。具体的には、商標登録願に①商標登録出願人の氏名、住所等②商標登録を受けようとする商標、③指定商品又は指定役務並びに商品および役務の区分を記載のうえ、特許庁長官に対して提出し、特許庁の審査官による審査を受ける必要があります(商標法5条1項各号)。審査官による審査をパスして登録料を納付すれば、商標が登録されて商標権を取得することができます(商標法16条、同18条1項及び2項)。
出願には、書面を窓口で提出または郵送する方法と、インターネットを用いて出願する方法の2種類があります。書面を用いた出願を検討されている方は、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)のウェブページ(https://faq.inpit.go.jp/industrial/faq/search/result/10939.html?event=FE0006)において書面の様式をダウンロードできます。インターネットを用いた出願を検討されている方は、特許庁の電子出願ソフトサポートサイト(http://www.pcinfo.jpo.go.jp/site/index.html)にて出願手続を行ってみるのがよいでしょう。
ただし、出願に際しては、出願範囲の選択や特許庁の審査をパスしない場合の対応など、専門的な知識を要する場合があります。出願にお困りの方は、弁護士知財ネットのウェブページにおいてご相談の申込みが可能ですので、是非下記ページへアクセスください。
【弁護士知財ネット ご相談の申込: https://iplaw-net.com/soudan 】

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Q12  商標を登録するためには、どの程度の費用がかかりますか。

A12 まず、商標を出願するための商標出願料を納付する必要があります。商標出願料は、3400円+(8600円×区分数)と規定されています(令和3年3月1日現在)。商標出願には書面による方法とインターネットを用いて出願する方法がありますが(Q11参照)、書面によって出願する場合には、電子化手数料が別途必要になります。また、特許庁の審査をパスし、登録査定の通知が送付された場合、30日以内に商標登録料として2万8200円×区分数を一括納付する必要があります(令和3年3月1日現在)。
「区分数」とは、商標を出願する際に指定する商品・サービスの区分の数をいいます。指定商品・指定役務と区分数については、Q15・A15をご覧ください。なお、商標出願が審査をパスせず拒絶された場合、納付した商標出願料は返還されません。

登録査定通知後に登録料を納付することで、当該商標権は登録の日から10年間有効に存続します。なお一括納付に代えて、5年ごとに2回の分割納付をする方法もありますが、総額としては一括納付よりも費用がかかります(1回につき1万6400円×区分数を納付する必要があります。)。

その他、商標の登録・維持のために想定される費用としては、10年の存続期間後に更新する場合の更新料、拒絶査定を受けた場合に不服を申し立てる際の費用、国際出願を行う場合の出願料などが考えられます。また、弁理士または弁護士に出願の代理を依頼した場合、別途弁理士または弁護士へ支払う手数料等の費用がかかります。

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Q13 出願から商標登録までどの程度の期間が必要ですか。

A13 商標出願を受理すると、特許庁では、まず書類の形式面について審査を行い(方式審査といいます。)、その後、審査官が商標登録をしてよいかどうかの審査(実体審査といいます。)を行います。
通常、この実体審査が一番時間のかかるところなのですが、近年、出願件数増加の影響により審査期間が長期化する傾向にあります。
特許庁の公表する「商標政策の現状と今後の取組」(2020年11月6日)によりますと、2019年度においては、特許庁が商標を出願してから第一次審査結果通知(FA)まで平均約9.9か月、審査の終了(TP)まで平均約10.9か月の期間を要するとされています。実体審査にこの約10.9か月程度がかかるケースを想定すると、出願から登録までに必要な期間は、不備のない出願書類を提出して方式審査をスムーズにパスするという前提で12か月程度になります。ただし、これは商標登録が認められるための要件(Q16参照)に問題がなく、すんなりと登録された場合です。なお、特許庁のウェブページ(https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shinsa/status/cyakusyu.html)において、審査室ごとの審査着手時期の目安も公開されておりますので、そちらもご参照ください。

ただし、一定の条件(①指定したい商品またはサービス(指定商品・指定役務)を、「類似商品・役務審査基準」、「商標法施行規則」又は「商品・サービス国際分類表(ニース分類)」に掲載の商品・役務どおりに指定する②審査着手時までに指定商品・指定役務の補正を行っていない)を満たした場合において、特許庁は、通常出願から一次審査結果通知までの期間を、約6か月に短縮して審査する運用(商標ファストトラック審査)を行っています。

さらに、ライフサイクルの短い商品・役務や、市場投入の準備が相当程度進んでいる商品・役務に早期に商標権を与えるため、一定の条件(例えば全ての指定商品・役務について、出願商標を既に使用または使用の準備を相当程度進めている場合など)を満たした場合、特許庁に申出を行うことにより、特許庁へ支払う追加費用等なしに、一次審査結果通知まで約2か月に短縮された審査(商標早期審査)を利用できます。

商標ファストトラック審査や、商標早期審査については、特許庁の以下のウェブページにおいても紹介されていますので、是非ご参照ください。

商標ファストトラック:https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shinsa/fast/shohyo_fast.html
商標早期審査    :https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shinsa/soki/shkouhou.html

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Q14  「標準文字制度」、「標準文字商標」とは何ですか。

A14  標準文字制度とは、文字のみにより構成される商標について出願をする際に、標準文字である旨を願書に記載することで、特許庁長官があらかじめ定めた一定の文字書体(標準文字)をその商標の表示態様として公表し及び登録する制度です。この標準文字制度を用いて登録された商標を標準文字商標といいます。
例えば、「ユニクロ」のブランドで有名な株式会社ファーストリテイリングは、図形商標とともに、標準文字商標の登録を行っています。

 図形商標
【商標第4653825号号】

 標準文字商標
【商標第4752936号】

標準文字商標は、願書中に標準文字による旨を表示さえすれば、商標見本の副本の添付も不要となるため、商標のデザインが決まっていない段階や様々なデザインでの使用を予定している場合等でも文字として出願が可能となり、出願手続の負担が軽減できます。

なお、商標法においては、継続して3年間、日本国内でその商標またはその商標と社会通念上同一と認められる商標を指定商品又は指定役務について使用されていない場合、誰でもその商標登録を取り消すために審判を請求することができます(商標法50条)。そのため、登録商標と実際に当該登録商標の商標権者が使用している商標がデザイン等の面でかけ離れている場合、登録商標を使用していないとして、商標の登録が取り消されてしまうリスクがあります。このように実際に使用している商標が登録した標準文字商標と全くかけ離れてしまった場合には、標準文字商標だけでなく、実際に使用している文字商標や、図形商標などのロゴ商標についても登録を検討する方がよいと思われます。

いずれにしろ、標準文字商標として登録すべきか、図形商標などのロゴとして登録すべきか、双方とも登録すべきか等についてはケースバイケースになりますので、戦略的に検討すべきでしょう。

弁護士知財ネットのウェブページにおいて、このような出願に関するご相談の申込みも可能ですので、是非下記ページへアクセスください。

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Q15  商標を出願する際の「商品・役務の指定」とは、どのような意味ですか。

A15 商標権は、標章(いわゆるマークで、文字、図形、記号などをいいます。)を、商品および役務(サービス)の標識として組み合わせて用いる権利であるため、出願時に、標識として用いたい商品・役務を指定する必要があります(商標法6条1項)。これら指定する商品・役務は「指定商品・指定役務」と呼ばれており、出願する際の指定商品・指定役務によって商標権の権利範囲が異なってきます。

指定商品・指定役務を記載する際は、併せて特許庁が定める「類似商品・役務審査基準」に従い「区分」(類)も指定する必要があります(商標法6条2項)。指定商品・指定役務の表示が不明確で、「区分」(類)に従ったものと判断されない場合、商標法6条1項または2項の要件を具備しないものとして、特許庁に商標登録を拒絶される可能性があるため気をつけましょう(商標法15条3号)。

【商標第1182696号】

【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
1  人工甘味料
5  乳糖,乳児用粉乳
29  食用油脂,乳製品
30   調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと
31  ホップ
32  ビール製造用ホップエキス,乳清飲料

【商標第4464004号】

【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
30 ポテトチップス菓子

商標権は、指定商品・指定役務について登録商標を独占的に使用する権利なので(商標法25条)、多くの商品・サービスを指定するとそれだけ商標権の保護範囲が広がりますが、Q12において述べたとおり区分の数に応じて出願料や更新料等が高くなるため注意が必要です。

また、区分ごとに複数の出願をする方法と、1つの出願で複数の区分を指定する方法があります。後者の場合、出願料や弁理士・弁護士に出願の代理を依頼した場合の手数料が安くなるメリットがありますが、複数の区分のうち1つに拒絶理由(特許庁の審査をパスしない理由)がある場合、拒絶理由のない残りの区分についても登録が遅くなったり、残りの区分も含め全体として登録を拒絶される可能性がある等のデメリットもあります。

以上のように、指定商品・指定役務及び区分、それに応じた出願料等を考慮して、自身の保護したい権利範囲に応じた出願を戦略的に行うことが肝要でしょう。

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Q16  商標登録が認められるための要件について,簡単に教えてください。

A16 大別すると以下の3つの要件を満たすことが必要です。

1.自己と他人の商品又は役務とを区別することができること(=識別力があること)(商標法3条)
2.公共の機関の標章と紛らわしい等公益性に反するものではないこと(商標法4条)
3.他人の登録商標や周知・著名商標等と紛らわしいものではないこと(商標法4条)

それぞれ具体的に説明します。

1.自己と他人の商品又は役務を区別することができること(=識別力があること)(商標法3条)

商標は自己と他人の商品又は役務とを区別することができなければいけません。
法は、自己と他人の商品又は役務とを区別することができないものとして、以下に該当する商標を掲げています。

①商品又は役務の普通名称のみを表示する商標(同条1項1号)
②商品又は役務について慣用されている商標(同条1項2号)
③単に商品の産地、販売地、品質等又は役務の提供の場所、質等のみを表示する商標(同条1項3号)
④ありふれた氏又は名称のみを表示する商標(同条1項4号)
⑤極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標(同条1項5号)
⑥その他何人かの業務に係る商品又は役務であるかを認識することができない商標(同条1項6号)
ただし、同条1項3号~5号に該当する商標であっても、一定の場合には例外的に商標登録を受けることができます(商標法3条2項、Q19参照。)。

2.公共の機関の標章と紛らわしい等公益性に反するものではないこと(商標法4条)

公益的に使用されている標識と紛らわしい商標や需要者の利益を害するおそれのある商標は登録を受けることができません。法は以下に該当する商標を掲げています。

①国旗、菊花紋章、勲章又は外国の国旗と同一又は類似の商標(同4条1項1号)
②外国、国際機関の紋章、標章等であって経済産業大臣が指定するもの、白地赤十字の標章又は赤十字の名称と同一又は類似の商標等(同条1項2号、3号、4号及び5号)
③国、地方公共団体等を表示する著名な標章と同一又は類似の商標(同条1項6号)
④公の秩序、善良な風俗を害するおそれがある商標(同条1項7号)
⑤博覧会の賞と同一又は類似の商標(同条1項9号)
⑥商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせるおそれのある商標(同条1項16号)
⑦商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標(同条1項18号)

3.他人の登録商標又は周知・著名商標等と紛らわしいものではないこと(商標法4条)

他人の使用する商標、他人の氏名・名称等と紛らわしい商標は登録を受けることはできません。法は以下に該当する商標を掲げています。

①他人の氏名、名称又は著名な芸名、略称等を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)(同条1項8号)
②他人の周知商標と同一又は類似の商標であって、同一又は類似の商品・役務に使用するもの(同条1項10号)
③他人の登録商標と同一又は類似の商標であって、指定商品・役務と同一又は類似のもの(同条1項11号)
④他人の登録防護標章と同一の商標(同条1項12号)
⑤種苗法で登録された品種の名称と同一又は類似の商標(同条1項14号)
⑥他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれのある商標(同条1項15号)
⑦真正な産地を表示しないぶどう酒又は蒸留酒の産地の表示を含む商標(同条1項17号)
⑧他人の周知商標と同一又は類似で不正の目的をもって使用する商標(同条1項19号)

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Q17  商品名やロゴマーク等の商標登録を行う場合、当該商品名やロゴマーク等の作成者でなければいけませんか。

A17 当該商品名やロゴマーク等の作成者である必要はありません。
ただし、当該商品名やロゴマーク等が「需要者の間に広く認識されている商標」等にあたる場合、商標登録を受けることはできません(商標法4条1項10号)。「需要者の間に広く認識されている商標」には、最終消費者まで広く認識されている商標のみならず、取引者の間に広く認識されている商標を含み、また、全国的に認識されている商標のみならず、ある一地方で広く認識されている商標をも含みます(商標審査基準〔改訂第15版〕第3の九の1(1))。したがって、出願する際には、これらにあたらないか否かを検討する必要があります。

また、ロゴマーク等が他人の著作権等により保護されている場合には商標登録したとしてもそもそも使用ができない点(商標法29条)、商標登録出願前から当該商品名やロゴマーク等の使用をする者について先使用権が認められる場合には、その者に対して、商標権を行使できない点(商標法32条)に注意が必要です。

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Q18  現在販売していない商品の商品名について商標を登録することはできますか。

A18 商標を登録することはできます。
商標登録を受けるためには「使用をする商標」(商標法3条1項柱書)であることが要件とされていますが、この「使用をする」には、出願商標を現に使用している場合はもちろん、将来において出願商標を使用する意思を有している場合も含まれます。したがって、現在販売していない商品の商品名であっても商標登録をすることはできます。

もっとも、登録審査では、商標の使用の意思を明記した文書や予定している業務の準備状況を示す書類を提出して使用する意思があることを具体的に示すことを求められる場合があります(商標審査基準〔改訂第15版〕第1の二の2、同3)。

なお、継続して3年以上、登録商標を付した商品の販売といった登録商標の使用をしなかった場合には、不使用取消審判の請求がなされ、これによって登録が取り消される可能性があるため注意が必要です(商標法50条)。

Q19  次のような商標は,登録できますか。
① 指定商品「牛乳」に使用する商標として「おいしい牛乳」を出願した場合。
② 指定商品「ビール」に使用する商標として「ウィスキー」を出願した場合。

A19 ① 登録できません。

「おいしい」は単に指定商品との関係で「品質」を表示するにすぎないため、「普通に用いられる方法で表示する商標のみからなる商標」として商標登録が認められないと考えられます(商標法3条1項3号)。
もっとも、他の識別力(Q16参照)のある文字等が付加されることにより商標登録が認められる場合があります。例えば、「明治∞おいしい牛乳」(登録番号第5490410号等)や「森永のおいしい牛乳」(登録番号第5109129号)は商標登録されていますが、これは「明治」「森永」に識別力が認められたものと考えられています。
また、使用をされた結果、識別力を得ることによって登録できる場合があります(商標法3条2項)。例えば、「堂島ロール」(登録番号第5446720号)や「余市」(登録番号第6071421号)は使用により識別力を得たものとして商標登録されています。

② 登録できません。

需要者が第32類の「ビール」を第33類の「ウィスキー」と誤認する可能性がありますので、「商品の品質」「の誤認を生ずるおそれがある商標」として商標登録が認められないと考えられます(商標法4条1項16号)。

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Q20  他の人が使用している商品名等を商標登録することはできますか。

A20  商標は、特許や意匠などの他の知的財産権と異なり、新規性が登録要件になっていないため、他の人が使用している商品名等であることをもって直ちに商標登録が否定されるものではありません。
ただし、他の人が使用している商品名等を出願する場合、以下の条項に該当することを理由に商標登録が認められない可能性があるため、商標登録が認められるための要件(Q16)の充足については、事前に慎重な検討が必要になります。

① 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標(4条1項7号)
② 他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの(4条1項10号)
③ 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(4条1項15号)
④ 人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的をもつて使用をするもの(4条1項19号)

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