知的財産権に関するQ&A 商標法(3) 商標登録、事前調査


弁護士 安藤啓一郎
弁護士 川野智弘
弁護士 佐野みず紀
弁護士 白波瀬悠美子

弁護士知財ネットでは、知的財産に関するQ&Aを公開しています。今回も前回に引き続き、商標法に関するよくある質問と回答をお届けします。
今回は、前回から引き続き商標要件に関する質問にお答えするほか、実際に特許情報プラットフォームJ-PlatPatを利用した検索方法もご紹介します。

 

知的財産権に関するQ&A 商標法(3) 商標登録、事前調査

Q21 町おこしとして、甲山市の中心街で養蜂をはじめました。当社以外は他に誰もやっていません。将来を見越して知名度がない今のうちから「甲山はちみつ」(横書き1段、標準文字を使用)という名前で、指定商品を「はちみつ」として商標を取っておこうと思うのですが、登録できますか。

A21 「甲山はちみつ」は「甲山」という商品の産地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、商標登録を受けることはできません(商標法3条1項3号、2項、7条の2)。このような商標は、取引上一般的に使用されることが多いため、自分の商品役務と他人の商品役務を識別することができず(自他商品・役務識別力がない、などと表現されます。)、また、取引上広く使用を認める必要があり特定の人に独占を認めることは適切ではないためです。
ただし、このような商標であっても、次の例外に当たる場合は商標登録を受けることができます。

【商標登録を受けることができる例外】
(1)使用による識別力を獲得した商標(同法3条2項)
使用された結果、誰の業務に係る商品又は役務であることを認識することができる状況に至っている商標(全国的に認識されていることが必要です。)は、自他商品・役務識別力を持つことから商標登録を受けることができます。しかし、設例はまだ始めたばかりで知名度がないようであり、この例外には当たらないものと考えられます。

(2)地域団体商標(同法7条の2項)
広く認識されている、地域の名称と商品・役務の名称等からなる商標で、特別法に基づき設立された組合等がその構成員に使用させるために地域団体として登録を受ける商標は商標登録を受けることができます。地域ブランドの育成・活用を支援する目的で平成17年改正によって導入された制度です。設例で出願を検討しているのは、このような地域団体ではない特定の事業者ですので、この例外にも当たりません。

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Q22  趣味でミステリー小説を書いています。最新作の「盗まれた商標権の罠」は、商標権制度を題材にした本格ミステリーで、自信作です。指定商品を「書籍」として、この小説のタイトルを商標出願しておこうと思うのですが、登録できますか。また、私が主宰している同人グループで年1回発行している「ミステリーの扉」という文集のタイトルも商標出願したいのですが、登録することはできますか。

A22 (1)ミステリー小説「盗まれた商標権の罠」について
「書籍」を指定商品として出願する場合、商標が、小説のタイトル(「題号」といいます。)として需要者に認識され、かつ、当該題号が特定の内容を認識させると判断されるときは、商標登録が認められない商品の品質を表示する商標に該当するとして商標登録は認められません(商標法3条1項3号、商標審査基準[改訂第15版]第1の五3(1)(エ))。この取扱いの背景には、①著作物の題号は、著作物の内容を示すものであり、通常、商品の出所を表示する標識として使用されるものではない、②このような題号について特定の書籍を示すために書籍を指定商品として商標登録がなされると、特定の人に独占を許すこととなり、著作権消滅後も著作物の利用が制限されるおそれがあって公益上も望ましいことではない、という考え方があります。
設例の「盗まれた商標権の罠」という商標は、題号として需要者に認識されて、特定の内容を認識させるものですので商標登録はできないと考えられます。

(2)同人グループ文集「ミステリーの扉」について
商標が、「定期刊行物」の題号である場合、通常、題号として広く認識されていても商標登録可能です(商標法3条1項本文、商標審査基準[改訂第15版]第1の五3(1)(オ)参照)。定期刊行物(新聞、雑誌その他)は、題号とかかわりなく様々な内容の記事を編集して発行されるものなので、特定の内容を認識させず、自他商品・役務識別力があると考えられるからです。

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Q23 商品のキャッチフレーズやキャッチコピー、社として掲げているスローガンなどを商標登録することはできますか。

A23 その商品や役務の宣伝広告や企業理念・経営方針等を普通の方法で表示したにすぎないものであれば商標登録は認められません(認められなかった例として「パールブリッジを渡ってきました」[平成12.01.06審判平11-13577]、「習う楽しさ教える喜び」[東京高判平13.06.28]、「新しいタイプの居酒屋」[知財高判平19.11.22])。

他方で、造語等としても認識できる場合には商標登録可能です(登録例として「元気ハツラツ」(大塚製薬㈱/清涼飲料その他)、プライスレス(マスターカード インターナショナル インコーポレイテッド/クレジッドカード利用者に代わってする支払代金の清算その他)、「The Power of Dreams」(本田技研興業㈱/自動車その他))。(商標法3条1項6号、商標審査基準[改訂第15版]第1の八2)
前者の商標登録が認められないのは、誰の業務による商品役務なのかを認識することができない商標を特定の人に独占使用を認めるのは公益上適当ではなく、また、自他商品・役務識別力を欠くために商標としての機能を果たし得ないためです。

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Q24  当社では、おかきやせんべいなどを製造販売しています。紺と白の市松模様柄の包装紙を、創業当時から40年以上使用しているのですが、最近、市松模様柄の羽織を着たキャラクターが主人公の漫画、アニメが人気となり、当社の包装紙も以前より注目していただけているように感じています。他社にまねされないように、商標登録してはどうかと考えたのですが、登録することはできますか。

A24  紺と白の市松模様のように,商標が「模様的に連続反復する図形等により構成されているため,単なる地模様として認識される場合」,通常、「何人かの業務に係る商品又は役務であるかを認識することができない商標」(商標法3条1項6号)にあたると判断され,商標登録は認められません(商標審査基準[改訂第15版]第1八7)。

ただし、創業当時から40年以上使用しているとのことで、「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるに至っているもの」といえる場合には,商標登録が認められる可能性があります(同審査基準第1八12)。
本件のように地模様からなる商標で,使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認められて商標登録が認められた例としては,以下のものがあります。

(株式会社三越伊勢丹 商標登録第5241411号)

(三井物産株式会社 商標第5515006号)

(ルイ ヴィトン マルチェ 商標登録第5864390号)

Q25  当社は、幼児向けの知育教室を運営しており、積み木をイメージした「△□」というシンプルなデザインのロゴを使っています。こういったデザインについても、商標登録の余地はあるのでしょうか。

A25 輪郭として一般的に用いられる△や□の図形は、「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」(商標法3条1項5号)にあたるとされており(商標審査基準[改訂第15版]第1七3?(カ))、商標登録が認められませんが、その配置に特徴がある等して、自他商品・役務識別力があると認められれば、商標登録を受けることができます。また、同号にあたる場合であっても、使用をされた結果、識別力が生ずるに至ったものについては、登録が認められる可能性があります(商標法3条2項)。
なお,数字や,ローマ字の1字または2字からなるもの,ローマ字の2字を「―」で連結したもの,仮名文字(変体仮名を含む)1字,仮名文字のうち,ローマ字の1字の音を表示したものと認識されるもの等についても,「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」にあたるとされています(商標審査基準第1七3?(ア)ないし(ウ)参照)。

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Q26  平面だけでなく、立体的なデザインも商標登録できると聞きました。どういったものであれば登録できますか。

A26 商品若しくは商品の包装または役務の提供の用に供する物(以下、「商品等」といいます。)の立体的なデザインについては、①自他商品・役務識別力があり、かつ、②その商品等が当然に備える特徴のみからなる商標(商品等の性質から通常備える立体的形状のみからなるもの、商品等の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなるもの)でない場合にのみ、立体商標として登録が認められます(商標法3条1項3号・2項、4条1項18号、商標審査基準第1十六2⑴)。②は、不可欠な立体的形状のみからなる商標について商標登録を認めると、特定人にその商品または商品の包装についての生産・販売を事実上半永久的に独占させ、市場における適切な競争を阻害するおそれがあるため、これを排除する必要があることから設けられた要件です。
特に、商品等の形状からなる立体商標の識別力に関する審査については、特許庁が特に厳しい取り扱いを定めています。例えば、商品等の形状は、多くの場合、機能をより効果的に発揮させたり、美感をより優れたものとしたりするなどの目的で採用されるものであり、自他商品・役務を識別することを目的とすることは少ないため、立体商標の形状が、商品等の機能または美観に資する目的のために採用されたものと認められる場合は、原則として、商品等の形状そのものの範囲を出ず、商標法3条1項3号にあたるものと判断されます(商標審査便覧49.02 1⑴)。そのため、平面商標を付さない立体的なデザインについては、多くの場合、商標法3条1項3号にあたるとして商標登録が認められない、という実情があります。
もっとも、商標法3条1項3号にあたる場合であっても、使用をされた結果、識別力が生ずるに至ったものについては、同法3条2項が適用され、登録が認められる可能性があります。
同法3条2項の適用により登録が認められた立体形状の例としては,以下のものがあります。

(ザ・コカ-コーラ・カンパニー 商標登録第5225619号)

(株式会社ヤクルト本社 商標登録第5384525号)

(カール・ハンセン&サン ジャパン株式会社 商標登録第5446392号)

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Q27  文字や図形、立体のほかに、動きや色、音など、新しく商標登録が認められたものがあると聞きました。どんなタイプのものがあり、それぞれ具体的にどういった内容のものですか。

A27 商標法改正(平成26年5月14日法律第36号・平成27年4月1日施行)により、改正以前は商標として登録し保護することができなかった以下の5つのタイプの商標について、登録することができるようになりました。

① 動き商標:文字や図形等が時間の経過に伴って変化する商標(例えば、テレビやコンピューター画面等に映し出される変化する文字や図形など)
具体例として、菊正宗の瓶を包んでいた紫の風呂敷が、四隅から広がり始め、瓶の上部が現れている状態からほぼ開き終わって瓶のほぼ全体が現れる状態までの動き(登録番号5804568)などがあります。
動き商標は、商標登録上、時間の経過に伴う標章の変化の状態が特定されるように、図に矢印を加えて記載したり、複数の図で記載したりされます。

(特許庁「新しいタイプの商標に関する審査基準の概要」より転載)

② ホログラム商標:文字や図形等がホログラフィーその他の方法により変化する商標(見る角度によって変化して見える文字や図形など)
具体例として、ギフトカードに付される、傾けた角度によって異なる色彩に見える商標などがあります。

(三井住友カード株式会社 商標登録番号5804315)

③ 色彩のみからなる商標:単色又は複数の色彩の組合せのみからなる商標(これまでの図形等と色彩が結合したものではない商標)(例えば、商品の包装紙や広告用の看板に使用される色彩など)
具体例として、消しゴムのパッケージの色彩などがあります。

(株式会社トンボ鉛筆 商標登録番号5930334)

④ 音商標:音楽、音声、自然音等からなる商標であり、聴覚で認識される商標(例えば、CMなどに使われるサウンドロゴやパソコンの起動音など)
具体例として、CMに使われる「ブルーレットおくだけ」の音声などがあります。

(小林製薬株式会社 商標登録番号5804301)

⑤ 位置商標:文字や図形等の標章を商品等に付す位置が特定される商標
具体例として、ズボンの後ろポケットの左上方に付され、「EDWIN」の欧文字が表された赤い長方形のタブ図形からなる商標などがあります。

(株式会社エドウィン 商標登録番号5807881)

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Q28  動きのある文字に、音も付け加えた短い映像を商標登録することはできますか。

A28 動きのある文字と音の組み合わせを一つの商標として商標登録することはできません。動きのある文字と音は、それぞれ個別に商標登録できるだけの識別力があって登録要件(商標法第3条)を満たすものであれば、動き商標と音商標として、別個の商標登録をすることができます。

Q29  特許情報プラットフォームJ-PlatPatで、インターネットを利用して商標を検索することができると聞きましたが、具体的にはどのような情報が検索できますか。基本的な使い方なども教えてください。

A29 特許情報プラットフォームJ-PlatPat(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)において、既存の出願・登録商標や周知・著名な商標、登録できない標章、指定商品・役務類似群コード等を調べることができます。
例えば、商標名での検索では、「J-PlatPat」という商標が、印刷物の商標として出願・登録されているかどうかを調べることができます。具体的な操作は以下のとおりです。(INPIT 「J-PlatPat 操作マニュアル」より転載)
① J-PlatPatのトップページから、「商標」―「商標検索」を選択します。

② 表示された画面で、以下の検索条件を入力します。

●「検索対象種別」で「出願・登録情報」を選択します。
●「商標(マーク)」の「検索項目」で「商標(検索用)」を選択します。
●「商標(マーク)」の「キーワード」に「J-PlatPat」を入力します。
●「商品・役務」の「検索項目」で「類似群コード」を選択します。
●「商品・役務」の「キーワード」に印刷物の類似群コード「26A01」を入力します。

③ 「検索」ボタンを押します。すると、「検索結果一覧(出願・登録情報)」画面が表示されます。

④ 参照したい「出願番号/登録番号/国際登録番号」列のリンクを選択すると、商標出願・登録情報が表示されます。

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Q30  新しく考案した和菓子に付ける名前を考えています。当社の地元に縁のある、「七福神」という名前を付けてはどうかと思いつきましたが、既にある商標権の侵害とはならないか心配です。大丈夫でしょうか。

A30 特許庁における審査では、指定商品・役務の類否を「類似商品・役務審査基準」に基づいて判断しています。この「類似商品・役務審査基準」は随時アップデートされているため、最新のものを特許庁ホームページなどで確認する必要があります。(https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/ruiji_kijun/index.html
「類似商品・役務審査基準」において同じグループに属する商品・役務群は、特許庁の審査実務において、原則としてお互いに類似する商品・役務であると推定されますので、同じグループに属する商品・役務について、出願・登録済みの商標と類似した商標を登録することはできません。また、類似した商標を使用すると既存の商標に対する商標権侵害となるおそれがあります(ただし、条文上、また裁判実務において、「類似商品・役務審査基準」の区分に基づいて、商品または役務の類否を判断しているわけではありません(商標法6条3項))。
各グループの商品・役務には「類似群コード」が付されており、この「類似群コード」はJ-PlatPatでも検索することができます。
和菓子に「七福神」という名前をつけることができるかどうか、実際に検索してみましょう。

① まず、和菓子という商品の「類似群コード」を検索します。
J-PlatPatのトップページより、「商標」―「商品・役務名検索」に進むと、商品・役務名検索画面がでてきます。「検索キーワード」の「商品・役務名」に「和菓子」と入力し、「検索」ボタンを押します。

すると、8件の検索結果が表示されます。
このうち、「和菓子」は、指定商品区分30、類似群コード「30A01」とわかります。

② 次に、検索した類似群コードを使って、商標検索をしてみます。
商品・役務検索の結果画面で類似群コードのリンクを選択すると、類似群コードを商標検索にセットすることができます。

「商標検索にセット」を選択すると、商標検索画面が表示されるので、「商標(検索用)」の「キーワード」に、「?七福神?」と入力して検索ボタンを押します。この「七福神」の前後に付けた「?」は、「七福神」の前後に言葉が付された商標も含めて検索するという意味です。

すると、129件(標準文字商標で69件)の商標登録出願がヒットしました。

特に、株式会社幸煎餅の「七福神」という登録商標(商標登録番号 4004283)があるため、「七福神」という名前を和菓子につけて製造販売を行った場合、当該商標権を侵害するおそれが大きいといえます。
もっとも、「七福神」の前後に言葉を付した「○○七福神」「七福神○○」といった商標登録も多数なされているため、既存の商標と類似しないような「七福神」という言葉を含む商標を使用する余地はあると考えられます。

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