営業秘密官民フォーラムメールマガジン掲載コラム 第36回|営業秘密を介した復興支援


営業秘密官民フォーラムメールマガジン掲載コラム 第36回

営業秘密を介した復興支援

弁護士知財ネット
東北地域会
弁護士 石井 慎也

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1 東北の企業における営業秘密

東北地方では東北経済産業局や各自治体及び商工会議所その他の民間団体が、営業秘密の重要性を啓発、周知するための各種企画や相談会を開催してきたことにより、「営業秘密が重要である」といった認識は企業に広まってきているものと感じている。もっとも、東北地方では、そもそも利益に結び付くような重要な営業秘密を持ち合わせていないという企業が多いと思われる。そのため、営業秘密に関する支援だけであれば、東北の企業の活性化に与える影響には限界があるように思われる。

2 東日本大震災の被災企業のニーズと支援

他方、東北の企業の中には、営業秘密とは別の面として、このままではいずれ経営の継続が困難となるにもかかわらず問題を先延ばしにしている企業や、より利益を生み出せる潜在能力があると感じながらどうしていいか分からないという企業も少なくない。特に東日本大震災によって、多くの企業が甚大な被害を受けたが、その中には、単純に震災前の状態に戻すだけではなく、これを機に何某かの改革をしたいと思いながら、それをどう進めたら良いか分からないという経営者も多かったように思う。

東日本大震災では、官民を挙げて被災企業に対し様々な支援が行われたが、金融面での支援、つまり借入金の支払期限の猶予や補助金等が支援の中心であったと思う。これは支援する側にのみ原因があるわけではなく、被災企業としても金融面に目が行くのは当然であり、改革が必要と考える経営者であっても、資金繰りに手一杯であった者が多かったと思われる。勿論、震災を機に経営改革を図ろうとする事業者に対する講演会・相談・専門家派遣等の支援も多数行われていたと思われるが、そうした支援についての広報が経営者に目に入るとは限らず、仮に目に入っても相談会等の「対象者」の内容が、そのときの経営者の自己評価とマッチしないと利用してもらえないため、折角開催しても利用者が少ない企画が少なくなかったと思われる。例えば、「東北の中小企業のための経営改革の在り方」といったタイトルの講演会や、「経営改革のための相談会」といったタイトルの相談会では、必ずしも本来支援を受けるべき経営者とつながれるとは限らない。

3 営業秘密を契機とした被災企業への支援

こうした中、営業秘密に関する支援は、単に営業秘密の活用に向けた支援に留まらず、専門家が経営者と接触する契機となり、以後、専門家が当該企業の改革を支援する流れにつながることも少なくない。

現に、私は、被災企業を支援する団体から、営業秘密に関する支援として、「支援先企業が、秘密保持契約書を締結する必要が生じたので相談に対応して欲しい。」という依頼を受け、それを機に、被災企業の改革の手伝いをしたことも少なくない。中には、債務整理を絡めた支援になったケースもある。ちなみに、営業秘密に関する支援をする団体の担当者等に、弁護士等の専門家がどのような支援ができるのかをもっと広く知ってもらえれば、こうした流れはより加速すると感じている。

4 多様な支援メニューの有用性

上記のように営業秘密という一つの方向からの支援が、全く違う方向からの支援につながる場合もある。したがって、今後も、官民による多方面からの企業に対する支援に期待したい。企業への支援活動は、常にその効果についての検証が必要であろうが、そのときには是非、上記のような支援活動の波及効果も視野に入れて議論していただければと思う。

以上

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