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営業秘密メルマガコラム

2022.07.13

営業秘密官民フォーラムメールマガジン掲載コラム 第68回|経済安全保障ガバナンスと営業秘密管理

営業秘密官民フォーラムメールマガジン掲載コラム 第68回

経済安全保障ガバナンスと営業秘密管理

弁護士知財ネット
弁護士 阿久津 匡美

PDF版ダウンロード:[営業秘密官民フォーラムメールマガジン掲載コラム] 第68回 経済安全保障ガバナンスと営業秘密管理

 

第1.はじめに

先般の経済安全保障推進法(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律)の成立を受け、今後、経済安全保障に関する基本方針が策定されるとともに、同法に基づく支援措置及び規制措置が段階的に施行されます。

同法は全体的に内国民待遇原則などの無差別原則を貫くものですが、他方で、人を通じた技術流出といった営業秘密管理、安全保障貿易管理の場面では、個々人の属性等に応じた対応が必要となり、企業においては、オープンイノベーションにおけるビジョンとバランス感覚のあるガバナンスが求められていると言えます。

そこで、去る6月20日に開催された第8回営業秘密官民フォーラム[1]のポイントを振り返りながら、経済安全保障と営業秘密管理の接点等について考察してみたいと思います。

 

第2.経済安全保障推進法と「経済安全保障」の基本的な考え方について

まず、前提として、経済安全保障推進法と「経済安全保障」の基本的な考え方についておさらいしてみたいと思います。

 

1.経済安全保障とは

経済安全保障推進法案[2]を審議した国会(衆参内閣委員会等)における政府答弁によれば、「経済安全保障」とは、国益を外交及び防衛に加えて経済面から確保することを意味します。我が国発の概念と言われています[3]

 

ここで、「国益」とは、2013年12月17日に国家安全保障会議及び閣議において策定された国家安全保障に関する基本方針「国家安全保障戦略」[4]が示す、以下の3つの国益を意味します。

 

■     我が国自身の主権・独立を維持し領域を保全し国民の生命・身体・財産の安全を確保し、豊かな文化と伝統を継承しつつ、我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うすること。

■     経済発展を通じて我が国と国民の更なる繁栄を実現し、我が国の平和と安全をより強固なものとすること。

■     自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値やルールに基づく国際秩序を維持・擁護すること。

 

「経済安全保障」という概念整理がなされた経緯には、政府答弁の言葉を借りるのであれば、自国に有利な形で既存の国際秩序をつくり変えていこうというこれまでと明らかに異質な状況が発生するようになったことがあると指摘されています。これを一言でまとめれば、骨太方針2022[5]が「経済安全保障の徹底」として掲げる、自由貿易の推進と不公正な経済活動への対応強化に集約されるでしょう。

自由貿易、自由競争という国際的な秩序、今まで当たり前の所与のものとしてきた部分においてもVUCA(Volatility, Uncertainly, Complexity, Ambiguity)の時代となっているからこそとも言えるのかもしれません。

 

2.自律性の維持・強化及び不可欠性の獲得

このように、「経済安全保障」という概念を打ち出して目指すもの、国益を経済面から確保して得ようとするものは、①脆弱性を解消し、強みを獲得することによって、他国の動向に右往左往しないという自律性の維持・強化と、②ゲームチェンジャー的な技術を日本が育成して、他国に対する技術を含めた優位性を確保し、それを磨いて国際社会にとって不可欠な存在となっていくという意味での不可欠性の獲得、の2つとされています(政府答弁)[6]

 

このため、経済安全保障推進法は、我が国の経済安全保障政策における「基本方針」の策定を骨格としつつ、分野横断的であって、法律が必要であり、かつ喫緊の課題の4つに対応するための規定を備えるという構造となっています。

 

3.基本的な考え方・大前提

この「基本方針」(第2条)について、政府答弁によれば、基本的な考え方として、企業の経済活動及びアカデミアの研究活動は原則自由であるという大前提に立った上で、これらを大きく阻害することのないようにする、経済安全保障の確保と自由な経済活動との両立を図ることが重要であるという考え方が示される予定とのことです。

 

この経済安全保障推進法における基本的かつ最重要な考え方は、第5条にも表れています。

第5条は、「この法律の規定による規制措置は、経済活動に与える影響を考慮し、安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度において行わなければならない」と規定し、アンダーライン部分のとおり、規制措置ファーストではなく、経済安全保障の確保と自由な経済活動との両立を図ることが重要であるという考え方のもと、規制措置は「合理的に必要と認められる限度」としています。

 

そして、何が大原則なのかというこの基本的な考え方は、法解釈の真髄であるわけですから、各企業が経済安全保障ガバナンス(経済安全保障の観点をもった企業統治)を進めていくうえでも、基本的かつ最重要な考え方になると考えられます。

経済安全保障推進法が成立し、規制措置が新たに導入されるからといって、経済安全保障は規制ありきだと誤解して過度に身構えたりせず、企業の自由な経済活動という大前提を維持するためには規制措置を講じなければならないような喫緊の課題が呈される時代であることを踏まえつつ、すなわち、経済安全保障と自由な経済活動や自由貿易は車の両輪のようなものであると捉えるべきと言われています。

 

4.新たに創設される4つの措置について

上記4つの経済安全保障上の喫緊の課題に対応する措置が、経済安全保障推進法により新たに創設された、①サプライチェーンの強靱化(支援措置。公布後9か月以内に施行)、②基幹インフラ(特定社会基盤)(規制措置。公布後1年9か月以内に施行)、③官民技術協力(特定重要技術)(支援措置。公布後9カ月以内に施行)及び④特許非公開制度(規制措置。公布後2年以内に施行)です。

 

このように、経済安全保障推進法は、規制措置ばかりを定めた法律ではありません。自律性の維持・強化と優位性の獲得のために、支援措置も講じようとするものです。

なお、本コラムは、営業秘密管理との接点についての考察ですので、各措置の詳細について論じることは割愛します。

 

5.経済安全保障推進法と経済安全保障推進法制について

また、基本方針の策定と分野横断的であって法律が必要であり喫緊の課題に対応するという位置づけからわかるとおり、経済安全保障推進法は、「経済安全保障」のすべてをカバーする法律ではありません。

今後策定される「基本方針」は、我が国の経済安全保障政策の骨格となるものですが[7]、経済安全保障法制としては、国益を経済面から確保することに資する、安全保障貿易管理や対内直接投資等に関する外国為替及び外国貿易法(外為法)、営業秘密に関する不正競争防止法、サイバーセキュリティ基本法を始め、上記②の基幹インフラで上乗せ規制がされる14分野の各種業法や重要土地等調査法といった既存法令も含まれます。

 

6.第90条について

経済安全保障推進法には、その第90条「国際約束の誠実な履行」に表れているように、全体的に内国民待遇原則などの無差別原則が貫かれています(政府答弁より)。

政府答弁によれば、同法は、特定国を念頭に置いたり、諸外国を同志国、懸念国に分けたり、外国又は特定の外国の企業、製品若しくはサービスであることを理由にこれらを差別的に扱うことを目指したりするものでもありません。例えば、官民技術協力(特定重要技術)の協議会への参加について、研究者が外国籍であることのみをもって限定すべきとは考えていないとの答弁が示されたりしています。

 

7.経済安全保障と営業秘密管理との接点

するとここで、企業においては、個々人の属性等に着目する営業秘密管理といかに整合的に企業統治をするか、いわば経済安全保障ガバナンスにおけるバランス感覚が求められることになり、非常に難しい問題に対応しなければならなくなっているわけです。

 

さらに、問題を複雑にしている、そして忘れてはならない重要なポイントが、不正競争防止法は、経済安全保障推進法と違って「国益」のための法律ではなく、あくまでも、「事業者間の公正な競争」を確保するための法律ということです。

「国益」のための法律ではない不正競争防止法に基づく「営業秘密」の保護を受けるための情報管理をするにあたって、「国益」を経済面から確保せんとする経済安全保障という観点を取り入れていく。他方で、内国民待遇原則という点では、不正競争防止法も経済安全保障推進法も共通します。法律論として論ずるのはさて措き、実務的な観点からは、次のように捉えることができるのではないでしょうか。

 

つまり、経済安全保障推進法は、国益を経済面から確保すること、「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値やルールに基づく国際秩序を維持・擁護」する(上記国益の3つ目)ためのものですから、自由貿易や自由競争といった普遍的価値観や国際秩序を後回しにせず、従前どおりに進めていくものであって、これを企業レベルに落とし込めば、経済安全推進法が成立したからといって、諸外国との貿易取引や、技術提供等のオープンイノベーション、官民交流を止めなければならないわけでも、ボリュームダウンしなければならないわけでもなく、企業としては、経済安全保障上のリスクがあるところに対して「合理的に必要と認められる限度」で対処しながら、引き続き、自由貿易や自由競争を推しすすめ、ひいては、「ゲームチェンジャー的な技術を日本が育成して、他国に対する技術を含めた優位性を確保し、それを磨いて国際社会にとって不可欠な存在となって」行きましょう、ということが期待されていると考えることができます。

 

すなわち、何が企業レベルでの、あるいは我が社における、経済安全保障上「合理的に必要と認められる限度」での対応なのか、それが、目の前にある実務上の難問として集約されます。

これを言い換えるならば、今の時代に即した変化や多様性が求められていると言えるのではないでしょうか。

 

したがって、結局は、今まで企業が接してきた各種問題同様、万能解はないわけであり、企業統治という側面から、コーポレートガバナンス・コードのプリンシプルベース・アプローチの考え方を手掛かりにするとすれば、「会社の業種、規模、事業特性、機関設計、会社を取り巻く環境等によって様々に異なり得る」ことを踏まえて、各社ごとに、自由貿易や諸外国とのオープンイノベーション等と経済安全保障が車の両輪であるという「その趣旨・精神に照らして」、自社の各種対応が「真に適切か否かを判断する」[8]ほかないと考えられます。

 

第3.経済安全保障ガバナンスと営業秘密管理

抽象的な議論になりましたが、経済安全保障ガバナンス(経済安全保障の観点をもった企業統治)の視点から捉えたときに、営業秘密管理において、何かすべきことが生じているのでしょうか。

 

少なくとも、PDCAに準えれば、これを機にCheckをすることが望ましいでしょう。

例えば、数年前に決めた秘密情報の秘密性・重要性の判断枠組みは今も変わらず有効なのか、この数年、漏えいが疑われたときに初動対応はできていたのか、初動対応時にボトルネックとなった事項はなかったか、再発防止策は効果があったのか、部署部門ごとに優等生・劣等生のようなバラつきが生じていないか、全社横断的といいながら属人的なスキルに拠った体制となっていないか、内規類と実務に齟齬が生じていないか・問題が生じたときに内規違反に問えなかったことはないか、我が社だけは大丈夫という慢心や正常性バイアスは生じてしまっていないのか、テレワークを始めとするデジタライズの流れや、DX(デジタルトランスフォーメーション)[9]として新たに始めたデータの利用・デジタル技術の活用のためのオープンイノベーションやアライアンスにおけるリスクの洗い出しはできているのか。

これらは、あくまでも一例であり、個社に応じたチェックポイントを洗い出してCheckせざるを得ません。

 

ここで手掛かりとして、さらに上位概念まで遡って考えれば、バランス感覚が求められているが故に、「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値やルールに基づく国際秩序」が維持・擁護されるという前提で、自由な経済活動ができるとして、我が社はどこを目指しているのかといったビジョンを明確にし、なぜオープンイノベーションやアライアンスをするのかという目的を振り返り、バランス感覚の軸を再確認することも有益でしょう。

これは、秘密情報の秘密性の判断枠組みにも、そして秘密情報の利用と管理のバランスにも、通奏低音のように貫かれる判断基準となるからです。

 

その上で、万一、このような大前提が挑戦を受けるような事態すなわち経済安全保障上のリスクが生じるとして、我が社の場合はどこが影響を受けるのか・受けやすいのか・受けたときの損害が大きいのか、いわゆるリスクベースドアプローチでの検討をして、CheckとActionをするという、経済安全保障の観点をもった演繹的な手法が考えられます。

例えば、システムやデータベースが企業活動の根幹なのであればサイバー攻撃、テックカンパニーなのであれば人を通じた技術流出、重層構造や世界規模で調達をしているのであればサプライチェーンの断絶、デジタライズが進んでいるのであればアプリ上での技術提供、人材の流動が激しいのであれば人を通じた営業情報の流出等々、今まで想定していなかった、見落としていたバッドシナリオはないでしょうか。

経済安全保障上のリスクという観点で、振り返ると新たな課題が浮上するかもしれません。

 

第4.営業秘密官民フォーラムのポイントから振り返る営業秘密管理

さらに、先日開催された、営業秘密官民フォーラム[10]で示されたポイントをチェックポイントして振り返るということもできます。

特に、中小企業、ベンチャー、スタートアップには有益と言えます。

各機関・団体ごとに以下のとおりのポイントが示されました。

 

1.独立行政法人情報処理推進機構(IPA)による「サイバーセキュリティ対策・内部不正防止対策」[11]

  • ランサムウェアによる被害が増えていることが紹介されました。
  • 5年ぶりに「組織における内部不正防止ガイドライン」[12]が改訂されました。

主な改訂箇所は、①テレワーク・クラウドの普及に伴う対策、②退職者関連対策、及び③ふるまい検知等の新技術対策です。

なお、この③については、危機的状況におけるモニタリングではなく、平時におけるモニタリング(システムや人手等により監視すること)であるため、説明責任の果たし方についても解説されています[13]

 

2.独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)による「営業秘密・知財戦略相談窓口の活動状況」[14]

  • 主に中小企業向けのものとなります。
  • INPITの営業秘密・知財戦略相談窓口では、過年度に引き続き、関西知財戦略支援専門窓口と共に、47都道府県の知財総合支援窓口と連携し、営業秘密管理体制の構築や知財戦略の策定を支援支援しています。

具体的には、営業秘密管理を実施していない傾向が高い中小規模企業を中心に、情報管理規程の整備に関する支援や社内セミナーを実施したり、また、公式動画チャンネルにおいて、秘密情報漏えいのトラブル事例を題材にしたショート動画を公開しています[15]

特に中小企業においては、これらの活用もぜひご検討ください。

 

3.日本貿易振興機構(JETRO)

  • 中国、タイ、ベトナムおよびインドネシアにおける営業秘密の管理体制をサポートする、海外における営業秘密漏えい対策支援事業が実施されています。
  • また、中国、タイ、ベトナム、シンガポール及び韓国における営業秘密管理マニュアル、並びに営業秘密に関する欧米の法制度調査が公表されていますので[16]、以下のとおり、管理体制のレベルに応じた使い方ができます。
  • 常に対策を見直している場合:現状のレビューとして
  • 一通りの規定等が揃っている場合:運用面の強化を目的に
  • 特に対策等を講じていない場合:一刻も早い体制整備が必要な場合に

 

4.安全保障貿易管理

  • 最近の動向がまとめられており非常に参考になります[17]
  • あわせて、技術情報管理認証制度が紹介されており、技術情報管理のための専門家派遣事業(令和2年度利用実績は延べ176回、令和3年度利用実績は延べ82回)も案内されています。

 

5.公安調査庁

  • パンフレットが公開されており[18]、①投資・買収、②不正調達、③留学生・研究者の送り込み、④共同研究・共同事業、⑤人材リクルート、⑥諜報活動及び⑦サイバー攻撃の7類型ごとに実際に発生したケース等が複数紹介されており、新たな気づきに繋がり得ます。
  • 情報発信として、技術・データ・製品等の流出防止などをテーマとした講演を行っていることやホームページ、「内外情勢の回顧と展望」[19]などの各種公表資料も紹介されています。

 

これらのポイントについても、各社の事情を踏まえて、適宜ご参照していただければと思います。

 

第5.おわりに

このコラムのシリーズも、営業秘密官民フォーラムの立ち上げとともに始まりましたが、その頃に、経済安全保障という概念が生じることをどれほど予測できていたでしょうか。

予測不能で、経済安全保障と自由な経済活動や自由貿易とを車の両輪のようなものであると捉えるべき新たな多様性ある情勢において、何のための営業秘密管理なのかという目的を見失わずに、自社のビジョン・思いに沿って経済活動ができるよう、営業秘密管理をご活用ください。

以上

 

[1] 営業秘密官民フォーラムウェブサイトは、https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/kanminforum.html

[2] 内閣官房経済安全保障法制準備室による概要、要綱及び法律案・理由等は、https://www.cas.go.jp/jp/houan/208.html

[3] 外国が経済的な手段を使って攻撃的に圧力をかけてくる(エコノミック・ステートクラフトをしかけてくる)ことに対して守ること(セキュリティ)が経済安全保障である(鈴木一人参考人(東京大学公共政策大学院教授)の第208回国会内閣委員会(令和4年3月31日)における答弁)という意味での、エコノミック・セキュリティという概念は日本発であるとされる(白石隆(公立大学法人熊本県立大学理事長)の、第208回国会参議院内閣委員会(令和4年4月21日)における答弁)。

[4] 「国家安全保障戦略」は、https://www.cas.go.jp/jp/siryou/131217anzenhoshou.html

[5] 「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~(令和4年6月7日閣議決定)」(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2022/decision0607.html

[6] 自由民主党税務調査会新国際秩序創造戦略本部による、2020年12月16日付けの「提言「『経済安全保障戦略』の策定に向けて」」(https://www.jimin.jp/news/policy/201021.html)において、「戦略的自律性とは、わが国の国民生活及び社会経済活動の維持に不可欠な基盤を強靱化することにより、いかなる状況の下でも他国に過度に依存することなく、国民生活と正常な経済運営というわが国の安全保障の目的を実現すること」、「戦略的不可欠性とは、国際社会全体の産業構造の中で、わが国の存在が国際社会にとって不可欠であるような分野を戦略的に拡大していくことにより、わが国の長期的・持続的な繁栄及び国家安全保障を確保すること」、「わが国の経済安全保障への取組は、わが国の経済面での戦略的自律性と戦略的不可欠性を具体的に明らかにすることから始めなければならない」と示された戦略的自律性及び戦略的不可欠性に対応するものと考えられる。

[7] 基本方針は、法施行後の国際情勢、社会環境、及び関係行政機関との調整などを踏まえて、第2条第2項第1号から第4号に基づき以下の内容について規定することが想定されているとのことである。

①第1号:経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する基本的な事項

政策の必要性と考え方、規制が経済活動の自由を不当に阻害することがないようにすること、国際法の遵守、事業者等の自主性の尊重、企業の責任ある行動の促進など。

②第2号:本法に基づく経済施策の一体的な実施に関する基本的な事項

各施策の対象の指定に当たって施策相互の連携を考慮すべきこと、各施策において基本指針、府省令などを定める際には、有識者の意見を十分に聴取すべきことなど。

③第3号:安全保障の確保に関して、総合的かつ効果的に推進すべき、第2号以外の経済施策に関する基本的な事項

国民の生活を支える重要な産業が抱える脆弱性、強みの点検、見直しを進めるべきこと、安全保障の確保のために本法に基づく措置が効果的に施行されるよう他の施策も統一的、整合的に講じるべきことなど。

④第4号:上記①〜③のほか、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関し必要な事項

必要に応じ、基本方針の見直しに関する事項、関係省庁との連絡調整に関する事項、指針・府省令など政策内容について周知、広報を図るべきことなど。

このように基本方針は、経済安全保障推進法が定める4つの措置以外の施策についても、すなわち、その名のとおり「経済施策を一体的に講ずる」ための、まさに経済安全保障のための基本方針となる予定である。

[8] 「「コーポレートガバナンス・コード原案」序文」9項及び10項(https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/nlsgeu000005ltbt.pdf

[9] 経済産業省による「「DX推進指針指標」とそのガイダンス」によれば、DXとは、「「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義される(https://www.meti.go.jp/press/2019/07/20190731003/20190731003-1.pdf)。

[10] 営業秘密官民フォーラムは、「官民の実務者間において、営業秘密の漏えいに関する最新手口やその対策に係る情報交換を行う場として」、営業秘密の保護強化が図られた不正競争防止法の平成27年改正に併せて、2015(平成27)年から年1回、開催されているものである。今般の経済安全保障推進法の法案審議の際には、経済産業省によるアウトリーチ活動の一つとして政府答弁で紹介された。

[11] https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/forum/reiwa4_forum/06_220620_IPA.pdf

[12] 「組織における内部不正防止ガイドライン」(https://www.ipa.go.jp/security/fy24/reports/insider/

[13] 「多様な情報を大量に常時取得し蓄積する点で…従来の方法とは比較にならない…従来の判例の枠組みで、業務上の必要性を認め、使用者の労務指揮権の行使としてのモニタリングを認めてよいのかは問題となる…労務指揮権が認められる場合でも、実際に導入する場合には、社内規程も整備し、事前に従業員に説明し十分に理解を求めることが重要である」とされている(菅野百合「AIと労働法」福岡真之介『AIの法律』(商事法務、2020年11月)339頁)。

[14] https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/forum/reiwa4_forum/07_220620_INPIT.pdf

[15] https://www.youtube.com/playlist?list=PLhESKlloeK5VtiDxfSPg_cvq2OyiiKBKi

[16] いずれも、右記ウェブページにて公開中(https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html)。

[17] https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/forum/reiwa4_forum/10_220620_meti.pdf

[18] https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/forum/reiwa4_forum/14_220620_PSIA.pdf

[19] https://www.moj.go.jp/psia/kouan_kaiko_index.html

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