Q&A

知財Q&A

著作権法(1)著作権法~著作権法ってどういう法律ですか?~

              

(最終更新日:2023/9/27)

              

弁護士知財ネットでは、知的財産に関するQ&Aを公開しています。
今回は著作権法の全体像についての質問にお答えします。

Q1 著作権法は何を定めた法律ですか?

A1
著作権法は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする法律です(著作権法第1条)。?作物等に対して著作権者等が有する著作権、著作者人格権、著作隣接権の内容とともに、第三者がそれらの?作物等を利用できる場合を定めています。

Q2 どういったものが著作物となりますか?簡単に教えてください。

A2
著作権法において著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されています(著作権法第2条第1項第1号)。
実は、私たちの日常生活で目にするものの中にも多くの著作物が存在します。たとえば、スマートフォンで、写真を見たり、音楽を聴いたり、アニメ・映画を視聴できると思いますが、これらは、それぞれ著作物に該当する可能性があります。
いかなるものが著作物に該当するかについては、後のQでも詳細に解説予定です。

Q3 著作権はどのような権利ですか?簡単に教えてください。

A3
著作権法は、著作権として、「著作財産権」と「著作者人格権」という2つの種類の権利を定めています。
著作財産権は、著作物の財産的な利用をコントロールする権利です。著作権法は、第21条から第28条において、この著作財産権として様々な権利を定めています。例えば、著作物を無断でコピー(複製)したり、無断でインターネット上にアップロードする行為(公衆送信)は、この著作財産権の侵害が問題となります。
著作者人格権は、著作者が自ら創作した著作物に対して有する人格的利益を保護するための権利です。著作権法では、著作者人格権として、公表権(著作権法第18条)、氏名表示権(著作権法第19条)、同一性保持権(著作権法第20条)が定められています。例えば、著作者の意に反して作品の題号や内容を変更した場合には、著作者人格権(同一性保持権)の侵害が問題となります。
著作財産権及び著作者人格権の詳細は、後のQで詳細に解説する予定です。

Q4 著作権を侵害するとどうなりますか?

A4
他人の著作権を侵害すると、民事責任と刑事責任を追及されるおそれがあります。民事責任としては、差止請求(著作権法第112条第1項)、損害賠償請求(民法第709条)等があります。刑事責任としては、その行為に応じて、最長10年までの懲役刑が法定されています。

Q5 著作権法は、特許法等の産業財産権に関する法律と異なるところがあるようですが、どのような特徴(差異)があるのでしょうか。

A5
著作権法は、文化の発展に寄与することを目的としており、産業の発達を目的とする産業財産権とは保護の枠組みに異なるところがあります。以下では、産業財産権のうち特許法と比較してみます。
特許法においては、新規性や進歩性等の存在が特許権付与のための要件となっています。これに対し、著作権法で保護される著作物は、創作的な表現であればよく(創作的な表現の意味については、Q12参照。)、新規性や進歩性等は要件となっていません。
また、特許権は、出願及び登録を経て初めて権利となりますが、著作権は、特段の方式は必要なく、著作物を創作することで直ちに発生します(無方式主義)。
さらに、特許権は、偶然に同一の発明を実施してしまった場合でも侵害となりますが、著作権は、既存の著作物に接して自己の作品中に取り入れること(依拠)が侵害要件となっており、著作物と同一又は類似の表現であっても偶然の一致によるものである場合には、著作権の効力が及びません(相対的独占権)。
その他にも、著作権法には、著作権者人格権といった強力な人格権の存在、従業員の創作がある場合に著作者を法人とする制度(職務著作)、比較的長期の保護期間、ベルヌ条約によって条約加盟国における保護を受けることができる、といった産業財産権にはない特徴があります。
以下の表に簡単に整理しましたので、ご参照ください。

著作権法 特許法
目的 文化の発展 産業の発達
保護対象・実体的要件 著作物・創作性 発明・新規性及び進歩性等
権利取得手続 創作時に発生 無方式主義 出願・登録必要
独占権の性質 相対的独占権 絶対的独占権
人格的利益の保護 著作者人格権あり 規定なし
保護期間 死後又は公表後70年 出願から20年
職務上の創作

(職務著作/職務意匠)

法人等が著作者となる。利益請求なし。 勤務規則等にて、法人等に権利帰属可。利益請求あり。

Q6 どうすれば著作権を取得することができますか。

A6
著作権は、産業財産権と異なり、出願・登録及びその他のいかなる方式も必要とせず、創作によって直ちに発生します(著作権法第17条第2項)。これは、ベルヌ条約第5条第2項が採用する無方式主義に従ったものです。
なお、著作権法には、登録制度の規定が存在しますが(著作権法第75条から第78条の2)、これは、著作権の移転等の第三者対抗要件や創作日等の事実関係の証明のための制度であり、権利の発生のための制度ではありません。

Q7 著作権の保護期間はいつまででしょうか?

A7
著作権の保護期間は、著作物の創作のときから始まり、著作者の死後70年を経過するまで存続します(著作権法第51条)。ただし、無名又は変名の著作物、法人その他の団体の著作物及び映画の著作物については、原則として公表後70年とされる等の特別の規定がおかれています(著作権法第52条から第54条)。
ある著作物に権利が付与されたとしても、産業財産権の分野と比較して、他の創作活動が妨げられる要素が低く、独占の弊害が少ないといえます。そのため、著作権は、産業財産権に比して保護期間が長期に設定されています。

Q8 外国で作成された著作物は、日本でも保護されるのですか。

A8
外国で作成された著作物であっても、日本国民が作成した著作物であれば、日本の著作権法による保護を受けることができます(著作権法第6条第1号、国籍主義)。また、最初に日本国内で発行された著作物及び最初に国外で発行されたがその発行の日から30日以内に日本国内において発行された著作物は、その著作者の国籍を問わず、日本の著作権法による保護を受けることができます(著作権法第6条第2号、発行地主義)。さらに、条約によりわが国が保護義務を負う著作物についても、日本の著作権法による保護が及びます(著作権法第6条第3号)。このような条約の例として、ベルヌ条約や万国著作権条約等があります。

Q9 著作隣接権というのは何ですか?

A9
創作された著作物は利用・流通してはじめて多くの人が知るところとなります。著作権法では、そういった著作物等を伝達する立場にある、実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者について著作隣接権という権利を与えて保護しています(著作権法第89条第1項から第4項)。著作隣接権の具体的な内容については、実演家の権利については著作権法第90条の2から第95条の3、レコード製作者の権利については著作権法第96条から第97条の3、放送事業者の権利については著作権法第98条から第100条、有線放送事業者の権利については著作権法第100条の2から第100条の5で規定されています。

Q10 ある作品を参考に別の新たな作品を作成したいと考えています。参考にする作品が著作物に該当するか否かを調べる方法はありますか?

A10
著作権は、無方式主義の下、出願・登録等の手続なしに創作によって発生する権利です(Q6参照)。あらゆる著作物を管理し、検索可能とするデータベースも存在しません。
そのため、ある作品が著作物に該当するか否かは、作品ごとに個別に判断するのが原則となります。また、著作物を利用する場合に、具体的にどのような行為が著作権に抵触するのかについても、個別の判断が必要となる場合があります。
弁護士知財ネットは、著作物性の判断や著作権侵害の成否等、著作権法に関するご相談全般に対応しております。著作権法でお困りのことがあれば是非弁護士知財ネットにご相談ください。