営業秘密をめぐる訴訟において、原告が主張する情報の営業秘密性が認められた場合は、被告の行為が不正競争防止法所定の各要件に該当するか否かが問題となりますが、そもそも営業秘密性が認められる事案が少ないこともあり、この点について検討される裁判例はあまり多くないように思われます。今回は、裁判例を通じて営業秘密の「使用」の意義とその立証について考えてみたいと思います。
営業秘密を第三者が不正に取得し、使用あるいは開示する行為は、不正競争行為とされており、被侵害者は、当該第三者に対して、受けた損害の賠償を請求できます。もっとも、「営業秘密」とされる「情報」には様々なものがあり、またその「使用」のされ方も一様ではないため、その使用によって発生する損害額の算定は容易ではありません。今回は、営業秘密侵害により被侵害者が受ける損害の内容とその算定について考えてみたいと思います。
秘密保持契約書(企業間)の条項が、本当に秘密情報を守れる契約書になっているのか、経済産業省が公開する秘密保持契約書の参考例を題材に検討を行ってみました。
情報の秘密管理手段であるパスワード。しかし、パスワードを設定していても秘密管理性が否定される場合もあります。パスワードの運用について、考察してみます。
民事訴訟において、当事者が提出した書類は、訴訟の当事者間で共有されることはもちろん、原則として、訴訟外の第三者もアクセスが可能となる。企業としては、営業秘密が記載された証拠書類等を訴訟で提出する場合、営業秘密の漏洩を防止するための訴訟制度を理解し、活用することが必要である。その一つが訴訟記録の閲覧等制限の制度である。
営業秘密の保護を検討するうえで不可欠な視点として、元従業員の転職の自由の保護という視点を欠くことはできない。これまで、営業秘密を保護する不正競争防止法の条項の適用が問題となった大多数の事案は、過去に当該企業において雇用契約を締結し勤務をしていた従業員の退職後の行為が問題となっているからである。そこで、本稿では、退職後の転職の自由の社会的意義を検討し、これを踏まえて、営業秘密の保護のあり方を考えてみたい。
最近、農水の分野においても知財を活用しようという動きが顕著であり、その中で、営業秘密の問題も取り上げられるようになっています。今回は、農業分野での営業秘密の問題の一つとして、交配種(F1品種)の保護について考えてみたいと思います。
「第四次産業革命」の呼び名と共に、人工知能(AI)を活用し幅広いデータを収集・解析する事業が次々に生まれています。その中で、これまではシステム活用と縁のなかった事業者においても、農業とデータの活用(アグリテック)などの場面で、自らの管理するデータを提供して新たなサービスを享受する動きが広がっています。本コラムでは、このような場面におけるデータの取扱を巡る問題について、不正競争防止法の平成30年の改正やガイドラインも踏まえ、説明いたします。
営業秘密官民フォーラムメールマガジン掲載コラム 第27 回 韓国と日本の営業秘密保護について 弁護士知財ネット国際チーム会員 韓国弁護士•弁理士 李厚東[1] PDF版ダウンロード:[営業秘密官民フォ…
企業者間において、ブランド使用許諾契約書を締結することがあります。それに関連して、契約外の第三者との関係で、両当事者間において、別個に秘密保持契約書を締結することがあります。両者の関係は案外厄介だと困惑したことがあります。そのお話をして、よい解決法を探りたいと思っています。
弁護士知財ネットから提供している本コラムも創刊から3年目を迎えました。本コラムでは、皆様の営業秘密管理の参考にしていただくべく、我が国の裁判例等、様々な観点からのコラムを提供してまいりました(読み逃してしまったコラムがありましたら、下記URLからバックナンバーをご覧ください。)。弁護士知財ネットは、これからも皆様の営業秘密の保護に役立つ情報をお届けできればと考えております。さて、3年目の最初となる今回のコラムは、営業秘密管理の基本に立ち返ってみたいと思います。
台湾には、営業秘密の保護に関する単独法としての「営業秘密法」があります。台湾では、近年、産業の国際化や人材の流動化に伴い、現職や退職後の従業員が会社の営業秘密を持ち出して漏洩する事件が相次いで発生したことから、2013年に営業秘密法が改正され、刑事罰や域外加重処罰に関する規定が導入されました。今回のコラムでは、台湾の営業秘密法の概要と最近の営業秘密侵害事件についてご紹介します。
企業における営業秘密の取り扱いをめぐっては、会社・従業員間だけではなく、共同経営者間でも紛争を生じることが少なくありません。今回のコラムでは共同経営者間で対立が生じた場合の営業秘密の取り扱いについて事例を交えて説明いたします。
今回の訴訟・判決コラムでは、営業秘密における民事訴訟上の判断と刑事訴訟上の判断の差異を分析したいと思います。
転職した元従業員が、転職先の会社で元の会社の顧客情報等を使用して営業活動を行ったとして、元の会社が、転職先の会社及び元従業員を訴えた。裁判所は、元の会社が小規模な会社であることを考慮しても、本件で問題とされた情報が不正競争防止法2条6項の秘密管理性の要件を満たしておらず、また、元従業員が元の会社の秘密情報を使用したことも認められないとして、請求を棄却した。
本コラムでは、電子媒体と紙媒体等複数の媒体で同一の情報を管理する場合の媒体の管理に関し、例えば、電子媒体にはパスワードの設定等相応の管理体制を構築していたものの、紙媒体のコピーやスキャンなど実際の事業活動における情報の使用において紙媒体の管理を疎かにした結果、秘密管理性が否定されることがあることについて、裁判例も紹介しながら、ご説明します。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。本メールマガジン第18号では、平成29年に出された営業秘密に関する裁判例が網羅的に紹介されました。訴訟になった場合、文書等の客観的証拠による立証活動が重要であることは言うまでもありません。しかし、営業秘密漏洩の事例では、問題となる情報が社内文書に記載されている等、客観的証拠が一方の当事者に偏在する場合が多いと言えます。そのため、不正競争防止法7条として文書提出命令に関する規定が用意されています。本第19号では、実際の裁判例を題材に、文書提出命令がどのような場合に認められるか、証拠収集の側面から営業秘密について検討したいと存じます。
みなさま平成29年はどんな年でしたか。営業秘密の分野でも、平成29年に新しい裁判例がいくつも出ています。このコラムでは、平成29年に出された営業秘密に関する裁判例をわかりやすくご紹介することで、実際の裁判ではどのような点が問題になっているか、今後の秘密情報の管理に参考にできる点は何か、を検討したいと思います。平成30年がより良い年になるよう、平成29年の裁判例から学んでみましょう。
弁護士知財ネットのジャパンコンテンツ調査研究チームは、その名の通り、日本の有するコンテンツをいかにして保護していくべきかについて調査・研究しております。画像やキャラクターなどについては、著作権など知的財産権として保護できる場合には、当該権利に応じた対応が可能です。もっとも、著作物に該当するかどうかの判断が難しいソフトウェアについて、著作権で保護されない場合に備えて、営業秘密としてどのように対策を講じることができるのかについて整理と若干の考察を加えたいと思います。
筆者は、営業秘密の保護に関する規定が不正競争防止法に導入されて営業秘密訴訟が提起されはじめた時期に、東京地裁知的財産部の裁判長として審理に当たっていました。近時は、新日鉄対ポスコ事件等の大型の企業秘密漏洩事件が提起されるに至っており、当時の状況から様変わりしていますが、草分けの時期の裁判所での審理の状況を紹介いたします。また、技術情報を営業秘密として保有する場合には、特許法上の先使用権を保全するための方策が必要となりますが、特許侵害訴訟の審理の経験を踏まえた説明をいたします。