企業が営業秘密の管理措置を適切に講じたとしても、その漏洩を完全に防ぐことができるとは限りません。不幸にも営業秘密が漏洩してしまった場合、企業としては、事実調査を実施し、事案に応じて法的手続等の措置をとることとなりますが、被害拡大を防止するためには、漏洩の事実を一日でも早く察知することが重要です。今回のコラムでは、典型的な漏洩事例をご紹介しながら、漏洩発覚の端緒を考えてみたいと思います。
ソフトウェア(プログラム)の場合、元従業員の持ち出しなどにより外部に流出し、それが転職先など他社において用いられてしまうケースが多く見られます。そこで、ソフトウェア(プログラム)について、どのような場合に営業秘密として保護されるか、また、その限界について、裁判例を踏まえて検討します。
現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受け、感染症対策の取組みの大きな柱として、自宅での「テレワーク」を導入する企業・法人が増えており、今後、利用促進はますます加速していくものと考えられます。テレワークの導入にあたっては、セキュリティ対策、労務管理を含むルール整備、ICT環境(端末やコミュニケーションツール等)の整備など、様々な課題がありますが、本稿では情報セキュリティの観点から、留意すべき事項等について簡単に整理します。
営業秘密たる情報のうち、技術上のものについては、特許法の観点から「発明」にも該当するものがほとんどです。そして、そのような「発明」のうち、企業において従業員が職務上創作したものは「職務発明」に該当するため、特許法35条の適用対象となると考えられます。特許出願せずに営業秘密として管理することになった職務発明について、特許法35条との関係において生じる、発明者への「相当の利益」の付与 の要否といった諸問題について、裁判例に照らしつつ、どのように対応すべきかを検討します。
秘密保持契約(NDA)といえば、企業が他の企業や個人と提携を検討する際にまず締結することが多いでしょう。弁護士としてレビューする秘密保持契約の内容はだいたい似たようなものが多いのですが、中には「あれ?」と思うものもあります。今回は、レビューした秘密保持契約を中心に、気になったものを取り上げてみます。
直接の取引の相手方との営業秘密のやりとりについては、気を付けて行うようになった方も多いのではないでしょうか。しかし、営業活動の過程で、取引の相手方から他社の営業秘密らしき有益な情報を入手する場合はどうでしょう。取引の相手方から開示された第三者の情報の取得及び使用が「不正競争」に該当することもあるのです。知財高裁の裁判例を元に具体的なケーススタディでご紹介します。
経営者として、自社の技術情報や顧客情報を他者に利用された挙句、管理が不十分であったために、裁判において、「営業秘密ではない」と判断されたら、困りますね。今回のコラムでは、近時の営業秘密に関する裁判例、特に「秘密管理性」の要件を判断した判例を中心に言及し、結局、どのように管理すれば営業秘密は保護されるのか?という点について検討します。
ドイツ連邦共和国の新しい営業秘密保護法”Geschaftsgeheimnisgesetz“は、厳しい議論の末、本年4月26日に施行となった。これは、権利者優位の特許侵害訴訟をはじめとするドイツの特許制度及びその実務を以てしても、一旦漏出した技術情報は、侵害訴訟による事後的な対応では到底不十分であるという現実、とりわけ地政学的な大きな変動を受けた、知財政策に関する苦渋の軌道修正という面がある。
不正競争防止法上の「営業秘密」として保護される要件として「秘密管理性」が上げられますが、近年では、営業秘密のほとんどがデジタルな情報として「電磁的に」管理されています。そこで、本稿では、営業秘密における「秘密管理性」を満たす管理とは、情報セキュリティにおけるどのような対策と関連するのかを検討します
不正競争防止法上の「営業秘密」に関し、同法の不正競争行為の成否を判断するためには、その前提として、不正「取得」「使用」「開示」が疑われる情報が「営業秘密」と同一であるかを検討する必要があります。また、同法の改正により導入された「限定提供データ」についても同様です。そこで、本稿では、裁判例において、情報の同一性がどのように判断されているかを検討します。
営業秘密の管理には難しい問題が山積していますが、まずはスタートすることが大切です。今回のコラムは、その第一歩を踏み出そうとする方に向けたイントロダクションです。
営業秘密官民フォーラムメールマガジン掲載コラム 第38回 AI・IoTの開発における学習用データセットの生成ノウハウの保護について 弁護士知財ネット 弁護士 後藤 大 PDF版ダウンロード:[営業秘密…
営業秘密を不正に使用して生産した物(営業秘密侵害品)の輸出入の差止めが可能になってから3年が経ちました。営業秘密の重要性の高まり、グローバル化の進展、雇用の流動化等に伴い、営業秘密侵害品の輸入差止めを検討する機会も増えていくことが予想されます。もっとも、営業秘密侵害品の輸入差止手続は、他の知的財産権侵害物品の輸入差止手続と異なる点がありますので検討に際し注意が必要です。
東北においても、東北経済産業局や各県の自治体、その他官民の多数の団体により、営業秘密の重要性を啓発、周知する活動が行われてきた。このことは、東日本大震災により甚大な被害を受けた中小企業に対し、営業秘密とは必ずしも直結しない問題について支援をする契機となった面が多分にあると感じている。そうした面について報告する。
営業秘密をめぐる訴訟において、原告が主張する情報の営業秘密性が認められた場合は、被告の行為が不正競争防止法所定の各要件に該当するか否かが問題となりますが、そもそも営業秘密性が認められる事案が少ないこともあり、この点について検討される裁判例はあまり多くないように思われます。今回は、裁判例を通じて営業秘密の「使用」の意義とその立証について考えてみたいと思います。
営業秘密を第三者が不正に取得し、使用あるいは開示する行為は、不正競争行為とされており、被侵害者は、当該第三者に対して、受けた損害の賠償を請求できます。もっとも、「営業秘密」とされる「情報」には様々なものがあり、またその「使用」のされ方も一様ではないため、その使用によって発生する損害額の算定は容易ではありません。今回は、営業秘密侵害により被侵害者が受ける損害の内容とその算定について考えてみたいと思います。
秘密保持契約書(企業間)の条項が、本当に秘密情報を守れる契約書になっているのか、経済産業省が公開する秘密保持契約書の参考例を題材に検討を行ってみました。
情報の秘密管理手段であるパスワード。しかし、パスワードを設定していても秘密管理性が否定される場合もあります。パスワードの運用について、考察してみます。
民事訴訟において、当事者が提出した書類は、訴訟の当事者間で共有されることはもちろん、原則として、訴訟外の第三者もアクセスが可能となる。企業としては、営業秘密が記載された証拠書類等を訴訟で提出する場合、営業秘密の漏洩を防止するための訴訟制度を理解し、活用することが必要である。その一つが訴訟記録の閲覧等制限の制度である。
営業秘密の保護を検討するうえで不可欠な視点として、元従業員の転職の自由の保護という視点を欠くことはできない。これまで、営業秘密を保護する不正競争防止法の条項の適用が問題となった大多数の事案は、過去に当該企業において雇用契約を締結し勤務をしていた従業員の退職後の行為が問題となっているからである。そこで、本稿では、退職後の転職の自由の社会的意義を検討し、これを踏まえて、営業秘密の保護のあり方を考えてみたい。